アクティブラーニング(能動的学習)

退屈な授業

 アクティブラーニング(能動的学習)とは、「Student Engagement」(学生の主体的、積極的な授業参加)を促す教育といえます。学生が自ら頭を使って考え、議論する。これによって、これからの社会に必要な力、例えば“自ら考え行動する力”などの育成が期待されます。
 以下に、「Student Engagement」のない状態を表現した動画を紹介します。この動画は、一方的な講義だけでは学生の無気力、無関心、不活性、あるいは教員との断絶を引き起こす。つまり、「Student Engagement」とは反対の方向に向かっていく、という主張をしております。



活気のある授業(学生が積極的に参加する授業)

 以下の動画は、佛教大学の「教育方法学」の授業風景です。 学生たちはいくつかのチームに分かれ、課題に取り組んでいます。まさに、「Student Engagement」のある、典型的な授業といえます。
 この授業では、チーム活動の成果を相互に発表し合います。これを通じて自分たちのチームの議論の経過や結論を振り返ることができます。この省察が、さらなる深い学びにつながっているようです。

What is Active Learning?

 「アクティブラーニング」とは何なのか。この動画では、以下のような説明が行われています。また、対面授業とオンライン(遠隔授業、eラーニングなど)という2つの場面で、それぞれ「アクティブラーニング」がどのように適用されるか、その例を示しています。

    1. 「アクティブラーニング」は、一方向的な講義ではない、別の教育技法を含んだもの。
    2. 「アクティブラーニング」は、科目全体の課題というよりも小さな作業である。ただし、課題の中にいくつかの「アクティブラーニング」が含まれることもある。
    3. 学生は何かに取り組まなければならない。例えば、情報を発見したり、処理したり、応用したりなど。・・・それは、単に講義を聞いたりパワーポイントを眺めるだけはない。

PBL ・・・Project Based Learning あるいは Problem Based Learning

 アクティブラーニングの方法のひとつ、「Project Based Learning(プロジェクト学習/PBL)」の概要を解説した動画です。
 ある現実のプロジェクトに取り組む過程を通じて、学生は「深い学び」を体験します。これによって獲得する「批判的思考」や「協働」、「コミュニケーション」に関するスキルは、21世紀社会に必要な人材に求められるものです。
 この動画の事例では、「クラスの半数が流感で欠席した」という現実の問題を取り上げ、生徒にあるミッションを与え、微生物に関する「深い学び」を促しています。「なぜ同時に病気になったのでしょう?」とい教師の問いかけは、生徒たちの質のよい疑問を引き出し、知りたいことを明らかします。教師は、「このプロジェクトはみんなの役に立ちます」と、生徒の学びを動機づけます。生徒はいくつかのチームに分かれ、疑問を出し合い、研究し、協力し合い、チーム間でフィードバックを行い、対策を明らかにしました。また、これを保護者やこどもたちに発表する機会を得ました。

 次の動画は、「Problem Based Learning」の全体をどう構成するか。Stenden Universityの実践例を示しています。ここでは、12名で編成された学生グループが、週2回、2〜3週間にわたり、7つのステップで“現実社会に起きる専門的な問題”に取り組む過程を何度か繰り返しています。

    1. テキストを読む。メンバー全員がその内容と取り組むべき問題を理解し、同じスタートラインに立つ。
    2. それはどのような問題なのか。主要課題にもとづき、それをはっきりさせる。
    3. 今、自分たちが持っている知識を把握する。問題分析などを通じて。自由な発想によるブレインストーミングも有効。
    4. それぞれの知識をアレンジする。問題解決の道筋が具体的な形として見えてくる。
    5. 不足する知識は何か、どんな課題を取り扱うのか。この議論を通じて、個人の学習目標が明らかになる。
    6. 各メンバーが個人学習を行う。例えば、専門家にインタビューし、あるいは理論や情報の収集し、次のグループ討議に備える。
    7. 個人学習の成果を持ちより、グループ討議を行う。これを通じて、新たな知識を獲得していく。

 このように、学生たちは、将来直面するであろう多様な課題に向き合い、新たな知識を自ら獲得しています。PBLでは、教員(「教師」といよりも「チューター」)には、グループ討議を支援する「ファシリテータ」としての役割が期待されます。

 次の動画は、「Problem Based Learning」の教育的効果と進め方を簡潔に紹介しています。

    1. 問題を用意する・・・現実の問題(正解のないような問題。学生の興味・関心を刺激する問題)を提示する/学生をチームに分ける
    2. 問題を分析させる・・・既知の事実と未知の事実を列挙させる/未知の事柄について調べさせる
    3. 考えを検証させる・・・自説を検証するため状況を考えさせる/可能性のある解決策を描かせる
    4. 発表させる・・・最適解を選択させる/解決策と具体的な手法を発表させる

 「Problem Based Learning」は、実践的で学生中心の教育法です。学生のチームワーク、創造的思考力、自立性を高める上で有効ですが、何よりも学習意欲を喚起する効果が絶大です。

「アクティブラーニング」を促す新たな教室環境

小樽商科大学の授業「財務管理論(コーポレートファイナンス)」

 小樽商科大学では、「アクティブ・ラーニング教室」を整備し、情報ツールを活用した新たな学びの環境を構築しています。以下の動画は、この新たな教室環境での授業実践を紹介しています。



東京大学・駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)紹介ビデオ(2007)

 東京大学が目指す「理想の教養教育のモデル空間」として駒場キャンパスに設置された学習環境「KALS(Komaba Active Learning Studio)」の紹介です。
先端技術を適用したディスカッション、グループワーク、プレゼンテーションを取り入れた多彩な授業が展開されています。

2分45秒〜KALSの教育設備(まがたま型テーブル/タブレットPC/4面プロジェクタ/インタラクティブガラスボード/パーソナルレスポンスシステム)
5分10秒〜KALSを活用した授業(アクティブラーニング/アカデミックライティング)


「ピア・インストラクションによるアクティブラーニングの深化」
(第84回京都大学高等教育研究開発推進センター公開研究会/2012年10月10日)→研究会の概要

「京都大学の心理学の授業におけるピア・インストラクションの実践」溝上慎一(京都大学)

 大人数講義(200名程度)の中で、どう「アクティブラーニング」を展開するか、その実践報告です。学生相互の対話を取り入れることによって授業の中に「協同」という社会的要素が加わること、その教育的効果について考察しています。



「アクティブで深い学びのための仕組み」松下佳代(京都大学)

 「アクティブラーニングだけでよいのか?」、「ディープ・アクティブラーニングが必要ではないのか?」、「これを実現する方法のひとつとして『ピアインストラクション』を位置づけたい」という構成です。

「教育イノベーションの育成と普及」飯吉透(京都大学)

 教育イノベーションを、どのように生み出し、育み、普及させ、持続させることができるのか、という問題を提起し、例えば、「理解しにくく使いづらい」、「一方的で押しつけがましい」、「改変と再利用がしづらい」、「惰性的な体制や枠組み」などの障壁をどう克服するのか、といった観点からいくつかの提言が行われています。

Active LearningTV (株式会社アクティブラーニング)

大学の授業はなぜ眠い?

 「能動的」な状態になると、脳がこれは重要な体験であると考え、その時起きていることを一生懸命分析し、自分の記憶にとりこもうとします。大学の授業を変えるために、できること、それは「体験」をとりこむことなのではないでしょうか?

学生がやる気を出すPBLとは?

 のっぺらぼうの15回ではなく、途中に発表会を設ける、最終プレゼン会を設けるなど、ある種のプロジェクト感を与えていくと、授業の集中度が格段によくなります。