経済学科

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【経済学科】経済学特別講義A(12月12日:第12回)

2014.12.19

お知らせ
経済学特別講義A(12月12日:第12回)
12月12日(金)の経済学特別講義(A)(3講時(13時10分から14時40分))において,北海道銀行営業推進部 アグリビジネス推進室室長の佐藤 泰一氏がゲストスピーカーとして講義をされました.講義題目は,「北海道農業を経済から見る」でありました.
 
講義に入る前に,簡単に北海道銀行の沿革を紹介され,旭川市で全道中小企業者によって設立要望がなされ,昭和26年3月の設立総会(札幌)にて北海道に根差した銀行として設立されました.現在では,141店舗(うち本州に2店舗),従業員2,300,また,瀋陽,ウラジオストック,ユジノサハリンスクに海外駐在員事務所をもっております.併せて経営統合している北陸銀行は,明治10年に設立され,北海道へは小樽支店として進出され,現在,全国に187支店,2,800名の行員の銀行であります,と説明されました.さらに,両行の預金と貸付の規模に触れ,銀行がどのようにして利益を得ているかについて(概要)説明され,銀行の戦略の一環としてアグリビジネスに取り組んでいることを念頭に置いて頂きたい,と前置きされて講義に入られました.
 
本講義では,北海道農業の位置や特徴を農林水産省,経済産業省のデータを用いて説明し,北海道銀行の農業支援についての新聞記事等を交えながら,45枚ほどのスライド資料を使用され,展開されました.その講義の展開は,以下の通りであります:
経済学特別講義A(12月12日:第12回)
1.北海道農業の位置とその特徴
農林水産省の統計(平成23年のデータ)によって,北海道は,食料自給率への寄与率が高く,カロリーベースでは,北海道は199カロリーほど,全国では940カロリーであり,全国のおよそ20%を占めております,と説明されました.また,生産量についても農林水産省によって示されている円グラフを紹介し,北海道農業の特徴を示されました.北海道では,土地面積の広さ,気象や土地条件などの地域的多様性を利用した農業が道央,道南,道東,道北の各地区で繰り広げられている示し,北海道農業の位置と特徴が示された。その位置では,第1に,北海道農業の産出額(つまり売上高)の総計は約1兆円,全国一位で,全国の農業生産(8兆円程度)に対し,北海道農業の全国に占める割合(シェア)は,12%超になります.第2に,経営規模でありますが,一戸あたり耕地面積は,北海道では22ha,都府県平均では1.5haで,北海道の耕地面積は都道府県のおよそ15倍になっていること,第3に,北海道の主業農家の割合が高く73%,都道府県では21%であること.また,農業就業人口は10.7万人(全国の4.3%)であり,就業者の65歳未満比率が68%であること,第4に,一経営当たりの農業粗利益では,都道府県の5.6倍の2,340万円ほど,農業所得では,都道府県の5.5倍の581万円ほどであることが示されました.
さらに,農林水産省の統計(平成23年のデータ)によって,北海道は,食料自給率への寄与率が高く,カロリーベースでは,北海道は199カロリーほど,全国では940カロリーであり,全国のおよそ20%を占めております,と説明されました.また,生産量についても農林水産省によって示されている円グラフを紹介し,北海道農業の特徴を示されました.
経済学特別講義A(12月12日:第12回)
2.北海道銀行のアグリビジネスへの取組
(1)農業と関連業種(産業)の連携
 北海道の1兆円産業としての農業と他の周辺業種との連携を1枚のフローチャートを示され,農業生産者は,原材料や機械の投入,ならびに,その生産物の生産および販売・流通ににおいて,多様な業種に依存していることを示され,農業と他の産業(分野)の連携の可能性・必要性を示され、引き続き,北海道銀行では,この農業と様々な業種のネットワークを重要な位置づけとし,農業生産の「入口から出口まで」はもちろんのこと,さらに,農業生産単体だけではなく,周辺ビジネスを含めた価値創造が必要と考えています,と説明されました.
 
(2)アグリビジネス推進室の設立(平成21年6月設立)
 既存の農業生産法人へのサポートと農業生産に新規参入する法人を支援することを目指して設立されました.農業経営アドバイザーを配置しておりますが,農業分野はその専門性を要し,お客様の話を理解するのは容易ではありませんので,そこで,北海道銀行としては日本政策金融公庫の農業経営アドバイザーの制度を活用しております,と説明されました.その主な取り組みとして「金融アドバイス・サポート」のほかに,「異業種参入支援」「ブランド化等の付加価値作り支援」を行っています,と述べられました.
 
(3)北海道銀行の農業経営塾
 北海道の農業生産者の法人化(株式会社や合同資本会社)も年々増加しており,現在,約2,900法人があり,これらの農業生産法人の課題は本当の意味での「企業化」であり,農業者を農業経営者にするためのお手伝いを,様々なツールを使いながら提供していきたいと考えています,と説明されました.
 
(4)ビジネスマッチング
 北海道銀行が早くから取り組んできたイベント「食の特別商談会」としての現地視察や意見交換会や商談会などのビジネスマッチングの必要性と効果について説明されました.数々の商談会で,商工業者と違い,農業生産者とバイヤーと間には距離が感じておりましたので,その距離を埋め,相互理解の必要性を考え,現場視察型の商談会を企画し,道内の各地域において,伊勢丹や東武百貨店などの百貨店や首都圏のスーパーやホテルなどのバイヤーを生産現場にご案内し,農業生産者との商談を行い,商談会では,バイヤーに農業現場を見ていただくことで,生産現場の厳しさを理解してもらい,その裏側にあるストーリー性も感じてもらいます,と説明されました.その結果,商談の成約も年々高まっています,と述べられました.
 
(5)植物工場
植物工場につて一般的説明をされ,引き続き,北海道での植物工場の意義と可能性について説明されました.最初に,植物工場では,製品の同質,ロットの定量化,製品納期の計画性が必要であり,出荷が計画的に行われるようになります,と説明されました.
引き続き,それには工場建設に相当な費用を要するという難点と,その克服の可能性が北海道にあることを説明されました.現在,北海道では,土地利用型の農業がほとんどですが,今後,工場の空き地や廃校になった学校の利用など様々な活用方法で,異業種参入での取り組みなどでは新たな農業生産の導入を推進するのも良いと思います.
また,ハウスの中の栽培が必須でありますので,夏場の暑さは大敵で,冷房コストも相当なかさむことも知られておりますが,北海道では,その点では,他地域に比して,冷涼であることから,さほど夏場のコストはかかりません.他面では,冬場に気温が下がるのが難点ですが,それも温泉熱や地熱利用で効率の良い植物工場も可能と考えられ,今まさに,様々な取組みが検討されています.
実際,植物工場については,道内外から問い合わせが増えており,多くの案件相談を頂いております.北海道のような広大な土地でわざわざ植物工場を考える必要性はないと考えになる方もおられるかもしれませんが,実は,最近では,夏場が冷涼な北海道こそ植物工場に相応しいという意見も聞かれるようになりました.植物工場は,今後の一つの大きなテーマになると考えています,と述べられました.
 
3. 農林漁業の6次産業化
(1)仕組みの説明
内閣府による農業が成長産業として将来にわたって維持発展していくために様々な検討を進めているなかで,昨年2月に、国と民間の共同出資によって株式会社「農林漁業成長産業化支援機構」(=「6次産業化ファンド」)が創設され、地域サブファンドとして組織される北海道銀行ファンドを組成されました.全国では,サブファンド総数は約40,サブファンド総額は約65兆円であります.その機構と地域サブファンドが,6次産業事業体に出資し,その活動を支援します.サブファンドとしての北海道銀行としては,このスキームにおいて,ビジネスマッチングなどの仲介に力を入れながら,「新しいビジネスモデルづくり」にチャレンジしていきます,と話されました.
 
(2)6次産業化とは何か,なぜ6次化が注目されるのか、ならびに,なぜ6次化に取り組むのか
農林漁業生産から加工・製造・流通・販売までを一貫して行うことであります,と簡潔に説明されました.具体的には,農業者,漁業者が,林業者で6次産業化のイメージを例示され,また,6次産業化とは,農林漁業生産者(生産)と2次(加工・製造)・3次(流通・販売)産業が連携し、新たなビジネスを展開することでもあります,と説明されました.幾つかの説明がありますが,積として6次産業を理解するのではなく,1次産業+2次産業+3次産業=6次産業であろうと個人的には考えていますと,述べられました.
何故,6次化が注目されるのかについては,第1に,生産と加工,流通・販売の連携が可能になることであり,第2に,経営者が新たな経営展開を求めていることが考えられます,と示唆されました.
消費者が何を必要としているのか,そのマーケットをしっかりと把握し,商品・プロダクトの観点ではなく,売れる市場からマーケットインすることが必要です.このニーズを捉えた商品が競争力のある商品・プロダクトとしての地位を確保することができます.その手法が6次化であり、6次化に取り組む理由であります,と説明されました.
 
(3)数値で見る6次産業化の背景
農林水産省作成の試算によって,10兆円の生産から,70兆円の消費までの流れを6次産業として捉えられ,6次産業化の背景を説明されました.具体的には,国内で算出された10.5兆円の農産品(一次産品)のうち、0.7兆円分が外食産業向けに提供され,外食産業では20.9兆円の食品素材に加工・製造され,販売され,食品製造業向けには6.5兆円が提供され,食品加工され,39.1兆円の食品加工品として販売され,また,3.3兆円が最終消費者向けとして提供され,13.5兆円の生鮮食料品として販売される. このように一次産品が製造・加工・小売され、付加価値を付して販売されます.最終的には,73.5兆円,つまり約63兆円もの付加価値を生み出しているのです.
 
4.今後の課題
(1)付加価値率
経済産業省の統計資料によって,北海道の食料品・飲料製造業出荷額における付加価値率は27.8%で,全国順位では44位で,全国平均のその付加価値率は33.6%であることを示されました.つまり,北海道の一次産業では,原料をそのまま出荷しており,加工・製造・流通・販売における付加価値は,他の都府県や他の産業に取り込まれているということなります,故に,これが北海道の一次産業のみならず,北海道全体の経済構造の大きな課題と言えます,と説明されました.なお,付加価値作りの成功事例としての具体的な6次化取組み事例を提示されました.成功させるためには,農業者の背景にあるストーリーをしっかり商品化に盛り込み,売上増加に結び付くことが重要でありますと,述べられました.6次産業化の取組企業数や認定数・品目については,4枚ほどのシートで示され,6次産業化は,認定経営体数ならびにその分野も増加基調を辿っていることを示されました.
 
(2)6次産業化の課題
6次産業化の課題は何であろうか.実際に,6次産業化に取り組んでいる農業法人へのアンケートに因れば,6次化のメリットには所得向上,農産物の生産拡大,企業的経営の確立,地域活性化が挙げられています.また,黒字化までの年数は4.1年,今後も拡大していきたいとする回答が多くを占めています.また,そのアンケートによれば,取組みで重要視している点は,商品の差別化・ブランド化・人材確保・原材料・製品の品質の高さ・資金調達となっており,さらに,取組みの課題として,ノウハウ・技術,資金不足,労働力,パートナー不足が挙げられています.
北海道銀行が地域金融機関としてやるべきことは,こうした農業者のために金融面での支援を行うことはもちろんですが,情報交換の場を提供し,ネットワーク構築のためのお手伝いをすることが非常に重要だと考えています,と力説されました.さらに引き続き,北海道の中で素材を作り,食品メーカーが北海道の製品を加工し,それを全国そして海外に移出すると同時に道内での消費も高めていく.いかに北海道の中で多くの段階を踏んでいくのか.それが北海道全体の経済に貢献していくのだろうと考えます.そういう意味でも「食」を支える外食産業・食品加工業・流通業などでの価値創造にも役立ちたいというのが北海道銀行の考えですし,そのためにも,アグリビジネスを力強く支援していきたい,と結ばれました.
 
 
TPP交渉での5品目巡るアメリカ(USA)との交渉の結果で,アメリカの農産物が輸入されると,北海道経済はどうなるのでしょうか、壊滅状態になるのでしょうか,また,農業部門の付加価値率を高めるには、流通過程を簡潔にする方がいいのではいいでしょうか,などの2,3の質疑が出されました.これには,TPP交渉の行方によっては,農産物の関税率の引き下げで、北海道経済はその影響は受けるでしょうが,北海道農業の技術力は競争力が高く,質の良い製品を世界に提供する戦略で対応することによって、北海道農業は勝利できるかかも知れませんと,応答され、この日の講義を終了致しました.
 
講師をお引き受けして頂きました北海道銀行 営業推進部 アグリビジネス推進室 室長の佐藤 泰一様には深く感謝致します.
 
経済学部 久保田 義弘 
  • 発行日: 2014.12.19