経済学科

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【経済学科】経済学特別講義A(10月31日:第6回)

2014.11.05

お知らせ
経済学特別講義A(10月31日:第6回)
10月31日(金)の経済学特別講義(3講時(13時10分から14時40分))において,北海道大学 公共政策大学院 教授の板谷 淳一氏がゲストスピーカーとして講義をされました.
 
講義題目は,「アベノミクスと北海道経済」でありました.講義では,30枚程のオリジナル原稿をパネルとして提示され,現在の日本の経済政策の特徴である,アベノミクスの経済政策の要約を簡潔に行い,経済成長政策として,従来の産業政策ではなく,規制緩和(所謂,岩盤規制の取り壊し)を受講者に説得的に講義されました.講義を次のように展開されました:
 
(1)最初に,アベノミクスの3本の矢とその内容を簡潔に取り纏められ,今回の講義では,第3の矢である成長戦略を具体化する成長政策あるいはその方向性を講義される旨を前置きされました.
 
(2)次に,6項目の政府の成長戦略を取り上げ説明され,続けて,経済成長、経済成長率の算出式,ならびに経済成長の源泉を解説されました.理論的には,潜在GDPと潜在成長率を引き上げることが第3の矢の成長戦略の内容になることを示され,その上で,何故,経済成長が必要かについて説かれました.
経済学特別講義A(10月31日:第6回)
(3)そもそも成長政策とは何を意味するのかを説明し、これまでの日本における成長政策は産業政策であり,ターゲティング・ポリシーでありましたが,その産業政策が成功した事例がないことを力説されました.つまり,特定の産業や分野を指定し,それを支援する優遇措置などの産業政策が成功した事例はないということでありました.また,そのような産業政策が経済学の見解とも合致しないことを説かれました.
民間の活力が産業そして国内経済を成長させるのであり,特定の産業や分野を優遇措置する産業政策が経済成長させるとは考えることはできません.また,そのような政策が有効に作用したと統計的にも有意な推計が得られていない点からも産業政策は有効ではないであろうことは理解されます.また,どの産業あるいはどのプロジェクトが成功するかを見極める能力において、政府部門が民間企業の経営者より以上にまさっているとは考え難いのです.政府部門が優遇措置を講じると,民間企業は補助金や税制上優遇措置などを求める行動に走り,企業が行うべき本来の生産活動にエネルギーを投下しなくなり,生産における付加価値の増加を阻害し,そのような政策は経済成長には貢献しないと考えられます.
経済学特別講義A(10月31日:第6回)
(4)それでは,政府部門は何を行うべきでしょうか.民間部門の活動を支援(サポート)する市場環境の整備を優先的に行うべきではないでしょうか.労働市場,金融市場などの環境(制度や企業活動基盤)整備が大切であります.政府部門は,民間活動を支える裏方に徹するべきではないでしょうか.
 
(5)具体的な成長政策は,規制緩和政策になります.所謂,岩盤規制を緩和する政策であります.端的には,全ての産業・分野で新規参入を歓迎し奨励する政策であります.例えば,重要な薬剤のネット販売の禁止を解く政策,農業分野への他企業からの参入を可能にする政策,農産物の流通における指定団体制度の介入を避け他の企業部門からの参入を促進する政策,電力の自由化の推進政策(特に,発電と送電の分離と,送電への新規参入の推進政策),さらに,国家戦略特区によって規制緩和地域を設ける.
 
(6)最後に、北海道経済への成長政策の影響を概観されました.日銀短観のディフージョン指標では,道内の産業の景況感は好転していること,円安による負の効果が企業活動に影響し,特に,原材料費の上昇で道内の中小企業は苦戦を強いられていることを説明されました.すなわち、北海道経済の現時点での好景気は、成長政策によってもたされたものでなく、公共事業と円安による一時的なものと考えられます.北海道経済が持続的な成長を続けるためには、やはり、行政部門が着実に規制緩和を進め、民間部門の活力を引き出す必要があります.
 
最後に,人口減少は雇用人口減少になるので、これへの対応として女性労働の活用だけではなく,移民の受け入れに依存することの問題と,原子力発電の再稼働や原子力発電に依存することの功罪や質疑応答されました.
 
講師をお引き受けして頂きました,北海道大学 公共政大学院 教授の板谷 淳一 様には深く感謝致します.
 
経済学部 久保田 義弘
  • 発行日: 2014.11.05