経済学科

経済学特別講義A(10月24日:第5回)

2014.11.01

お知らせ
経済学特別講義A(10月24日:第5回)
10月24日(金)の経済学特別講義(A)(3講時(13時10分から14時40分))において,財務省 理財局 国債企画課 課長補佐の石田 良氏がゲストスピーカとして講義されました.
 
講義題目は,「国債管理政策の概要」でした.講義では,財務省,日本銀行等のデータ等から構成された45枚ほどのスライド資料を使い,まず国債を根拠法,商品性及び発行形態で分類した後,国債発行の現状と日本の財政との関連を概観し,どのように国債管理政策を行っているのかについて,聴講者に分かり易く講義されました.
経済学特別講義A(10月24日:第5回)
北海道との関わりあるいは縁についての小話から講義に入られ,まず,国債とは国の借用証書が証券化されたものであり,転売可能であることを解りやすく説明されました.続けて,国債を,根拠法に基づき,普通国債と財政投融資特別会計国債(財投債)とに分類し,前者は建設国債,特例国債,借換債などから構成され,後者は,事業期間が長期に亘ったり,大規模であったりする事業に対し国が融資・出資を行う際に発行されますと説明されました.また,普通国債に含まれる建設国債と特例国債に対しては,いわゆる60年償還ルールが適用され,年当たり1.6%の割合で一般会計から国債整理基金に繰り入れが行われることを説明されました.更に,国債を償還(満期)期間から,短期国債(1年未満),中期国債(2年,5年),長期国債(10年),超長期国債(20年,30年,40年)と分類されたほか,発行形態では,割引国債,利付国債と分類されることを簡潔に説明されました.
 
続けて,国債発行の現状を描写すべく,財務省の資料データを使って平成26年度の歳入・歳出の現況を概観され,歳入では公債金収入が歳入96兆円の43.3%,歳出では国債費がその24.3%(利払い費は10.6%)になり,財政が国債発行に依存している現況を説明されました.このことを,家計には寿命があり国には寿命がないという性質の違いに言及しながらも,家計の借金依存を例にして解りやすく説明されました.平成26年度の国債発行予定額では,国債発行総額が180兆円を超え,181.5兆円になり,一般会計分が41.3兆円ほど,借換債が122.1兆円ほど,財投債が16.0兆円ほどと計画されており,また,消化方式別の発行額では,市中発行分が168兆円ほど,日銀乗換分が11.1兆円ほど,個人向け販売が2.5兆円ほどになることを資料で提示されました.国債発行の推移をまずフローで見ると,平成5年度ころから,一般会計での歳入が減少し始め,歳出超過の度が増してきたことから国債発行(主に建設国債)が増加し,更に,平成20年度以降(リーマンショック以降)も国債発行(主に特例国債)が増加したことを解説されました.次にストックの面から,国債発行残高の推移に関する財務省のデータ資料を提示され,フローの面とパラレルに,特に、リーマンショック以降には,国債発行残高が急増加しており,建設国債,特例国債残高のどちらの残高も累増していることを示されました.財務省のデータによって,国及び地方の長期債務発行残高の対GDP比が200%を超えたことを確認され,国際比較によって,先進国は軒並み財政赤字であるとはいえ,日本は債務残高対GDP比の観点では先進国内で最悪であることを示されました.日本の国債への依存度が高いことを確認した上で,財政健全化目標(フロー指標)のプライマリー・バランス(基礎的財政収支:PB)と財政収支を示され,ドーマーの定理(法則)にも言及され,内閣府の中期財政計画を概観されました.中期財政計画の基本姿勢を内閣府の資料で確認され,2015年度のPBを2010年比で半減し2020年度までにそれを黒字化する計画に触れられたほか,目標達成の基本的な取組みとその試算について概観されました.
経済学特別講義A(10月24日:第5回)
最後に,本講の主要なテーマであった国債管理政策について講義されました.国債の発行,消化,流通及び償還に係る国債管理政策を担っている当局の基本的な目標として,国債の確実かつ円滑な発行と,調達コストの中長期的な抑制を挙げ,その下で,オークションによって市場の求める国債を供給し,参加者の意向を踏まえながら,国債の円滑な償還を進めること,そして多様な国債商品を多様な層に保有していただくことを目指しておりますと説明されました.国債発行当局として,市場との対話に関しては,国債市場特別参加者会合,国の債務管理の在り方に関する懇談会や国債投資家懇談会などの機会を通じて緊密に行っていること,また,国債の保有を促進するために国債投資家懇談会などに加えて海外IRや国債トップリテーラー会議を開催していることを説明されました.また,商品の多様化に関しては,平成10年以前には,国債は20年,10年,2年物が主流であったところ,それ以後,30年,15年,5年,40年物が発行されたことにより商品の多様化が図られ,また,平成15年に個人向けに10年変動国債,そして固定5年国債,固定3年国債が発売されたほか,新型窓口販売が始まり,個人向け以外の国債でも個人が購入しやすくなったことを説明されました.
 
国債の保有者の多様化のために,個人の保有を促進すると同時に,海外投資家の保有も促すべく努力をしていることを説明されました.また,日本の国債の海外保有者の割合が8.5%程であることにも触れ,この値はアメリカの47%,イギリスの27%,ドイツの62%と比較すると,極端に低いということを説明されました.
質疑応答では,海外の企業に法人税等を課すことによって財政赤字を減らせるのではないでしょうか,また,低金利(マイナス金利)を続けると,国債の流動性を維持できなくなるのではないでしょうかといった質問が出されました.前者については,海外の企業には居住国の徴税権が及ぶ可能性があるので二重課税の問題を解決する必要があること,後者については,最終的には,経済学者の間でも意見の分かれている問題で,難しい問題で,今後の検討課題とすることでまとめました.
 
講師をお引き受けして頂きました,財務省 理財局国債企画課 課長補佐の石田 良様には深く感謝致します.
 
経済学部 久保田 義弘
  • 発行日: 2014.11.01