人間科学科

Department of Human Sciences

【人間科学科】木戸功:教員紹介

2008.04.01

お知らせ

木戸功:教員紹介

木戸功:教員紹介


社会学の立場から家族をめぐるさまざまな問題について研究しています.誰でも知っていることで恐縮ですが,家族というと普通は一緒に住んでいて,結婚していたり血がつながっていたりする人々のことをさします.たいていの人は大人になるまでは,子どもとして親やきょうだいなどとともに家族生活を営んでいますが,大人になって誰かと結婚などして独立し,さらに子どもが生まれたりして新たに家族をつくったりします.すると,その新しくできた家族がその人の家族であるということは,もちろんその通りだと思うのだけれど,では,その人が大人になるまで一緒に生活してきた親とかきょうだいとかっていうのはもう家族じゃなくなるのか?っていうと,必ずしもそうではないですよね.たぶん.
しかしだとすると,それはその人だけの問題じゃなくて,同じことがその人の結婚相手にとってもいえるはずです(もちろんこのことは親にだっていえるはずですよ).となると,その人の家族と,その相手の家族とは,実は同じではないということになりますよね.私とあなたは家族だけれど,私の家族とあなたの家族は同じではないということになる.いや,でも「お宅のご家族は?」などと尋ねられたりすると,もともとの家族であるところの親やきょうだいがいる場合であってもたいていは「妻と子どもです」とか「夫と娘です」とか,さらっと応えられたりするわけで,そういう場合に「私たちは家族だけれど,私の家族とこの人の家族とは違うんです…」などと応えたりしたら,いよいよわけが分からなくなるだろうし,そんなややこしいことをいいだす人は残念ながら(というか幸いにして)たぶんいません.
家族というのは常に誰かと誰かによって(つまり複数の人間によって)構成されているのだけれども,よくよく考えてみると,誰が家族なのかということさえも応えることがやっかいな問題だったりします.このようによくよく考えるとかなりややこしいものであるにもかかわらず,その一方で私たちはそれなりにすんなりと家族生活を営んでいたりします.なんでそんなことができてしまっているんだろう?というのが私の率直かつ素朴な問いです.こうした問いは,家族がそれを構成する人々のどのようなやりとりをとおして形成され日々営まれているのかという問いへと展開していきます.さらに,そこに家族以外の人間が何らかの関わりをもつ場合はどうなるんだろうという問いへとも繋がっていきます.こうした関心から私は,家族とよばれる人々の日々の営みや,家族外の人間(とくに福祉専門家)と家族との関係について調査をしながら探っています.
人間科学科では,家族社会学,ジェンダーの社会学,フィールドワークなどの授業を担当しています.ややこしい問題を単純化してわかった気になるのではなく,そのややこしさ自体をその問題がもっている特徴としてじっくりと丹念に考えていくこと.大学での学びの基本はそこにあると思います.音楽と映画,サッカーと水泳を心から愛する私の「今の」家族は,妻と娘と猫2匹です.
  • 発行日: 2008.04.01