2008年9月28日(日)開催・札幌学院大学・第3回オープンキャンパス

「法廷教室模擬裁判」シナリオ

 

<司会者あいさつ>

 

 本日はお忙しい中、法学部法律学科の体験型学習企画「法廷教室模擬裁判」を、傍聴にご来場いただき、まことにありがとうございます。

 本日の模擬裁判は、いわゆる振り込め詐欺事件を題材とした刑事裁判の一場面をご覧いただき、刑事裁判や刑罰の果たすべき役割について、ご来場くださった皆さまに考えていただく機会としたいと思います。 

振り込め詐欺事件には、近年道内においても急増している還付金詐欺など、さまざまな手口がありますが、今回とりあげるのは、被害者の親族になりすまして被害者の家へ電話をかけ、言葉巧みに金銭をだましとろうとする、いわゆる「オレオレ詐欺」事件です。
「オレオレ詐欺」は、複数の者たちが犯罪グループを結成し、被害者の親族の役や警察官の役、金融機関のATMに金をひきだしにゆく役などの役割分担を決めて、実行されるのが一般的です。犯行には、第三者名義のプリペイド式携帯電話や高額所得者の名簿などが準備・使用されますが、こうした活動の背景には非合法の犯罪組織が介在していることはいうまでもありません。

 しかし、今回は、こうした「オレオレ詐欺」の反社会的な性格を十分理解できないまま、少し危険なアルバイト感覚、ゲーム感覚で、マニュアルどおりに電話をかけてみた学生が、あっさりと逮捕されてしまった、という場面を設定してみました。 

検察側は、被害者にウソをついてだました被告人の証言は、簡単には信用ができないと厳しい尋問を重ね、最後には、裁判所に対して厳罰を求めてゆきます。弁護側は、1回限りのできごころによる犯行なのだから、執行猶予つきの判決にしてほしいと訴えます。

一度でもあやまちを犯したら、その人は直ちに刑務所に送るべきなのか否か。刑事裁判や刑罰の果たすべき役割について、ぜひ考えてみてください。 

なお、検察側・弁護側の最後の意見のなかで「一般予防」というコトバが出てきます。このコトバの意味については、このあとの佐藤陽子先生のミニ講義で詳しい解説をきくことができますので、楽しみにしてください。 

 それではお待たせいたしました。ただいまから、模擬裁判の開廷です。


 

●情状に関する被告人質問

 

<弁護側>

 

裁判長:開廷します。この法廷は振り込め詐欺事件の裁判の法廷です。(弁護人・検察官の双方に)今日は被告人質問からでしたね。

弁護人&検察官:はい。

裁判長:それでは、情状に関する被告人質問に入りたいと思います。被告人は前に出てください。

被告人:はい。(被告人は席を立ち証言台へ)

裁判長:では弁護人、始めてください。

弁護人:はい。では、まず、被害者の鳴海さんにあなたが虚偽の電話をかけた事情についてお尋ねします。あなたは2008年7月7日午後1時すぎに青森県青森市在住の鳴海さん宅に、他人名義のプリペイド式携帯電話を使って電話をかけましたか?

被告人:はい。

弁護人:鳴海さん宅に電話をかけたのは、そのときが初めてだったのですね?

被告人:はい、初めてでした。

弁護人:鳴海さん本人やそのご家族の誰かと面識があったのですか?

被告人:いいえ。まったくの赤の他人です。

弁護人:赤の他人か では、鳴海さん宅の電話の番号はどうやって調べたのでしょうか?

被告人:調べたっていうか 半分ホントで半分ウソというのか 

弁護人:半分ホントでって、どういうこと?

被告人:名簿です。名簿を見たんです。

弁護人:名簿って、どういう?

被告人:サークルのOBの名簿です。部室にあったので、それを見て、大昔に卒業した先輩の青森の実家の番号があったので、これなら遠いから、でもそのまんまだとまずいと思ったから、終わりの方だけ変えて、それで 

弁護人:サークルのOBの名簿で青森出身の先輩の実家の連絡先を知った。しかし、そこに電話をかけたのではすぐに発覚すると考え、同じ局番のまま、電話番号の末尾の数字を置き換えてかけてみた。そういうことで、いいですか。

被告人:はい。

弁護人:では、被害者の鳴海さんとの通話についてお尋ねします。あなたからの電話に出た鳴海さんと、あなたはどういう話をしたのですか?

被告人:「おれだけど、分かる?」と あの マニュアルをみて 

弁護人:マニュアル?

被告人:オレオレ詐欺って、はやっていたから。それで、ネットで調べて、マニュアルをみつけて 

弁護人:ネットでみつけたマニュアルどおりに話しかけてみた。そしたら?

被告人:相手が つまり、被害者の鳴海さんが息子さんからの電話と信じ込んで それで、これもマニュアルどおりに「変わったから」って 

弁護人:変わった? 電話番号が変わった、ということですね。

被告人:はい。それで、そのときはそれで切りました。

弁護人:電話の相手を安心させる手口で、それもマニュアルどおりですか?

被告人:はい。

弁護人:次に電話をかけたのは?

被告人:1週間後でした。

弁護人:7月14日ですね。今度はどんな話をしたのですか?

被告人:病気になって急にまとまったお金が必要になったので、足りない分を銀行口座に大至急振り込んでほしい、と言いました。

弁護人:病気というのは本当の話でしたか?

被告人:いいえ。

弁護人:要求した金額は?

被告人:10万円です。

弁護人:その10万円は、本当は何に必要だったのですか?

被告人:指輪代です。誕生日にプレゼントしたくて、それで 

弁護人:ガールフレンドの誕生日が近かったのですか?

被告人:はい。21日が誕生日でした。むかし札幌駅の大丸で彼女がテイファニーの指輪をみつけて、それがほしいって言っていたので 

弁護人:7月21日がガールフレンドの誕生日だった。彼女は以前からテイファニーの指輪がほしいと言っていた。しかし、10万円の指輪はすぐに買ってあげられるものではなかった。そんなとき、オレオレ詐欺の話を思い出し、つい手を出してしまった。こういうことですか?

被告人:はい。そのとおりです。

弁護人:あなたが振込先に指定した銀行口座、これは誰の名義でしたか?

被告人:私自身の銀行口座です。

弁護人:それもマニュアルどおりでしたか?

被告人:いいえ。本当は他人名義の銀行口座か何かを使うのかもしれないけれど、そんなものは持っていなかったので、自分の口座を指定しました。

弁護人:普通の市民は誰一人、架空の銀行口座なんか持っていません。そんなものを持っているのは凶悪な犯罪組織の関係者だけでしょう。つい一時の思いつきでウソの電話をかけただけのあなたは、そういう世界とは全く縁がなかったわけですね。

被告人:はい。

弁護人:わかりました。それで、あなたの口座に10万円は振り込まれましたか?

被告人:はい。

弁護人:それで指輪を買ったのですか?

被告人:いいえ。銀行に引き出しに行ったら、銀行の人に呼びとめられました。そして、そのまま警察の人に 

弁護人:逮捕されたのですね。それでは、次の質問ですが、あなたはこの事件の発覚後、被害者に対して何か謝罪といえる行動をしましたか?

被告人:はい。おわびの手紙を書きました。

弁護人:返事は来ましたか?

被告人:いいえ、でも、弁護士さんから、被害者の方が心配してくださっている、と聞きました。

弁護人:そう、被害者の鳴海さんはね、犯人があなたのような若い方だと知って、あなたの将来を案じてくださっているのですよ。あなたはどう思っていますか?

被告人:私がだましたんだから、責められて当然なのに、本当にありがたいと思います。本当に軽率なことをしてしまったと、申し訳ないことをしてしまったと、反省しています。

弁護人:わかりました。弁護側からは、以上です。

 

<検察側>

 

裁判長:それでは、検察官、質問をどうぞ。

検察官:はい。(被告人に)さきほどのあなたの話をきいていると、あなたはガールフレンドの誕生日に指輪をプレゼントしたいと思い、その代金を被害者からだまし取るために、本件犯行に及んだ、ということのようですが、それでいいですか?。

被告人:はい。

検察官:指輪がほしいと言われたのは、いつごろですか?

被告人:いつごろって ずいぶん前からです。

検察官:ずいぶん前からというと、去年の彼女の誕生日よりも前からですか?

被告人:いいえ、そんなには たぶん去年のクリスマスのときが最初です。

検察官:それはどんな調子でしたか。買ってくれなければ、もうあなたとはつきあえないとか、深刻な調子でしたか?

被告人:いいえ、大丸の中を二人で歩いていたら、こんな指輪が自分のものだったらいいなって言われました。

検察官:指輪だけでしたか? 洋服とか他に話題にはならなかったのですか?

被告人:その売り場では指輪だけでした。でも、他のフロアでは、他のものが話題になったかもしれません。彼女とデートのたびにいろんな話をするから、いちいち覚えてはいません。

検察官:去年のクリスマスの後、今年7月の事件までの間、彼女はあなたに会うたびに、その指輪を買ってほしいと繰り返したのですか?

被告人:会うたびに、というほどではありません。ときどき、です。

検察官:ちなみに、去年の誕生日には何をプレゼントしてあげたのですか? 何万もする高価な品をプレゼントしたのですか?

被告人:いいえ 去年はたぶん2000円くらいのTシャツだったと思います。

検察官:なるほど。そうすると、今年の誕生日にかぎって、10万円の指輪を奮発しようと思い立った、ということですね。ところで、今回の事件を起こしたとき、あなたの毎月の収入は?

被告人:ススキノの居酒屋のバイトで毎月2、3万くらいです。夏休みとかは別ですけど。あとは学生支援機構の奨学金が毎月8万くらい入りますが、全額学費に回しています。

検察官:授業には遅刻したり無断で欠席したりしていませんでしたか?

被告人:ときどき遅刻したり休んだりしたことはあります。

検察官:授業をサボって何をしているのですか?

被告人:知り合いと札幌市内で遊んだり色々です。

検察官:そうした交際にもお金はかかりますよね。

被告人:それは、かかりますが、だからバイトしてて、それで大丈夫です。

検察官:そうですか。次に、7月の通話について質問します。さきほどの話では、あなたは被害者の鳴海さん宅に、7月7日および14日の2回、電話をかけた、ということでしたね?

被告人:はい。

検察官:それだけでしたか? あの携帯電話であなたは鳴海さん宅以外にも電話をかけたことはありませんでしたか?

被告人:あります

検察官:いつ、どこへかけたのですか?

被告人:かけたのは同じ7日です。さきほども話が出ましたが、名簿でみつけた番号の末尾ふたケタの数字を1つずつ変えて、順々に呼び出してゆきました。

検察官:鳴海さん宅にかける前に何回くらい電話をしましたか?

被告人:よく覚えていませんが、十数回は電話をした、と思います。

検察官:記録によれば、鳴海さん宅を入れて13回です。相手は出ましたか?

被告人:いいえ。留守電ばかりでした。

検察官:鳴海さん宅が、7日にあなたがかけた、最後の電話だったのですね?

被告人:はい、そうです。

検察官:次に、携帯電話について質問します。今回の犯行にあなたが使ったプリペイド式携帯電話ですが、あなた名義のものでしたか?

被告人:いいえ、違います。

検察官:他人名義ですよね。ソフトバンク社製で名義は「オザワ・タロウ」となっていました。「オザワ・タロウ」とは知り合いですか?

被告人:いいえ、直接は知りません。

検察官:というと?

被告人:その携帯はバイト先で知り合った「タナカ」という人から譲り受けたもので、「オザワ・タロウ」はその「タナカ」という人の知り合いだという話でした。

検察官:「タナカ」という人は、下の名前はなんというのですか?

被告人:知りません。

検察官:フルネームも分からない人から、あなたは第三者名義の携帯を譲り受けたのですか? そんなおかしなことをしたら、それだけで「携帯電話不正使用禁止法」違反になることを知らなかったのですか?

被告人:そのときは知りませんでした。

検察官:あやしいと思わなかった?

被告人:それは少しヘンかなとは思いましたが、いいバイトをいずれ紹介するからって 

検察官:いいバイト? どういう内容?

被告人:分かりません。夏休みに入ったら紹介するって言われていただけだから 

検察官:しかし、携帯を使うバイトだったとは、聞かされていたのですね。

被告人:あの携帯はとにかく持っていろと言われていただけです。ただ、そのとき、オレオレ詐欺の話も教えてもらいました。

検察官:それは、オレオレ詐欺のチームに入らないか、という誘いではなかったのですか?

被告人:そういう誘いの言葉はありませんでした。

検察官:でも、あなたは実際に、被害者にウソの電話をかけて10万円をだまし取ろうとしましたよね?

被告人:それは私が思いついて勝手にやったことで 本当です。こんなことでいまさらウソなんか言いません。

検察官:「タナカ」という人からは、その後、連絡はありましたか?

被告人:いいえ。

検察官:(裁判長に)検察側からは以上です。

 

裁判長:(弁護人に)弁護側、再主尋問はありますか?

弁護人:はい。(被告人に)一つだけ、正直に答えてください。「タナカ」という人とは、いまはもうまったく関係がないのですね。

被告人:はい。

弁護人:もし、今度また、他人名義の携帯電話をみせられて、いいバイトの話があると誘われたら、あなたはその誘いに乗りますか? それとも、断りますか?

被告人:断ると思います。

弁護人:思う、じゃなくて 

被告人:あ、はい、断ります。

弁護人:(裁判長に)以上です。

裁判長:被告人は席へ戻って下さい。(被告人、被告人席に戻る)

 

論告求刑・最終弁論

 

<検察側の論告求刑>

 

裁判長:ではこれより、検察官・弁護人双方の最終意見をうかがいます。まず、検察官に論告をしていただきます。検察官、お願いします。

検察官:はい。それでは論告・求刑をいたします。

我々検察側は、被告人・福田を、被害者の親族になりすまし金銭を要求する振り込め詐欺事件の犯人であるとして、その公訴事実の内容について、立証してきました。

   第一に、被告人・福田が本件犯行に及んだことは、当法廷に提出された証拠に照らして明らかであり、これについて被告人本人も争っておりません。被告人は、全く面識のない被害者宅に親族になりすまして二度にわたって電話連絡をおこない、言葉巧みに被害者を欺いて自己名義の銀行口座に10万円を振り込ませており、これは人を欺いて財物を交付させる行為を詐欺の罪として処罰する刑法246条に該当する犯罪行為です。

   第二に、本件犯行の反社会性についてです。当法廷で明らかにされたように、被告人は、あたかもゲーム感覚で複数の電話番号を次々に呼び出し、たまたま通話に応じた被害者が第一の犠牲者となってしまいました。幸いなことに今回はたまたま最初の犯行で失敗したために被害が拡大せずに済みましたが、もし第一の被害者が不審に思って通報していなければ、被害者に対してさらに多額の金銭を要求しただけではなく、第二、第三の犠牲者を生んだであろうことは、あらためて指摘するまでもありません。

また、被告人は、犯行に他人から譲渡された第三者名義の携帯電話を用い、犯罪の発覚を阻止すべく実に周到な準備をおこなっています。プリペイド式携帯電話が振り込め詐欺等の犯罪の道具として使用される危険性は広く社会に報じられているところであり、ましてや、本件の場合、被告人は組織的な振り込め詐欺への勧誘を明らかに受けていたと思われます。仮に、組織犯罪との関連性には思いもよらなかったという被告人の弁解を認めるとしても、被告人のとった行動はあまりに軽率で自己中心的であり、自らの金銭的欲望を満足するために、かかる卑劣な犯罪に走った被告人の犯行の反社会性は明らかである、といわなければなりません。

   最後に、かかる犯罪の根絶の必要性についてです。いわゆる振り込め詐欺事件は、警察・金融機関等のとりくみにもかかわらず、その被害はむしろ拡大しています。2008年度の上半期・半年間の被害は全国で1万1755件、被害額は約166億9000万円と、上半期としては2004年以降で最悪の被害となりました。その内訳では「オレオレ詐欺」が件数4167件・被害額約92億円と最も多く、次いで、年金などの払い戻しを装い、現金自動預払機の操作を指示して現金をだまし取る「還付金詐欺」が急増をみせています。

   この種の犯罪の特徴ですが、被害者とじかに向き合うことなく、電話一本で被害者を言葉巧みにだましている彼らには、詐欺という重大な犯罪をおこなったという自覚が著しく低いことがまれではありません。「電話一本で金を振り込む方が悪い」とうそぶく彼らのような犯罪者を根絶するためには、一般予防の見地から、たとえ初犯であっても、法の許す限度一杯、厳しい刑を科し、もって反社会的な犯罪を犯す者たちを強く威嚇することが不可欠となります。

   よって、被告人・福田は、詐欺の罪で懲役5年の実刑に処することが相当であると思われます。

 

<弁護側の最終弁論>

 

裁判長:では、次に弁護人の弁論をうかがいます。弁護人、お願いします。

弁護人:はい。私たち弁護側は、被告人が許すべからざる犯罪を犯したとしても、まだ若い被告人本人の酌むべき事情にかんがみ、執行猶予が相当である、と主張します。

   まず第一に、本件は、複数人の犯罪グループによる組織的な詐欺事件ではない、という点です。たしかに、素性の知れない第三者名義の携帯電話でひともうけしようと考えた被告人の判断はあまりに軽率でした。しかし、かんじんの金の振込先として被告人自身の名義の銀行口座を指定しているとおり、被告人の犯行はいかにも思いつきに基づいた幼稚なものにすぎません。

   被告人は7月7日に13件の呼び出しの末にようやく被害者宅にたどりつきました。それとても、じきに被害者自身にあやしいと見破られる程度の演技力であって、検察側が第二、第三の被害者を云々するのは、いささかこっけいに思われます。

   次に、被告人の生活態度が概して真面目であり、また、現在非常に反省しているということです。無遅刻・無欠席ではないものの、被告人の学業に対する態度は真面目であり、奨学金もこれを流用することなく全額学費にあてています。被告人に前科はなく、本件が初犯であることも見逃せません。

さらに、被告人は、自らおわびの手紙をあらわし、反省の気持ちを明らかにしております。被告人の保護者からも、二度とかかるあやまちを犯さないよう、厳重に監督をしてゆきたい旨の申し出がなされており、再犯のおそれはまったくありません。

   検察側は一般予防の見地から厳罰を主張しておりますが、これは本件被告人に関する限り、酷に過ぎるといわなければなりません。もとより凶悪な組織犯罪をにくみ、これを根絶する決意において、私たちはいささかも検察側に劣るものではありません。しかし、本件についていえば、これは、ガールフレンドに特別のプレゼントをと、はやる気持ちに押されてなされた、1回限りの稚拙な犯行にすぎません。憎むべきはあやしげな携帯を被告人に譲渡した者たちであって、これに軽率にも応じた被告人を、ことさら厳罰に科すことにどれだけの意味があるのか。私たちはすこぶる疑問に思います。

   真に凶悪卑劣な組織犯罪に対しては、厳罰の言い渡しを、いささかも躊躇すべきではありません。しかし、本件のように、情状について考慮されるべき点が数多くある場合にまで、やみくもに厳罰主義をふりかざすのは、国家刑罰権の乱用と非難されてもやむを得ないのではないでしょうか。

   以上、被告人・福田に対しては、実刑はふさわしくなく、執行猶予が相当である、ということを主張し、裁判所の寛大なるご判断を期待して、弁論を終わります。

 

<被告人の最終陳述>

 

裁判長:被告人は証言台へ。

被告人:はい。(被告人は証言台へ)

裁判長:これで審理を終えますが、最後に言っておきたいことがあれば、簡潔に述べてください。

被告人:はい。被害者の方にしてしまった事に対しては、大変申し訳なく思っています。このことを深く考え、今後二度と同じことを繰り返さないようにしたいと思っています。本当に申し訳ございませんでした。

裁判長:わかりました。それでは被告人はもとの席へ。(被告人は被告人席へ)

以上を持ちまして、被告人・福田に対する振り込め詐欺事件の弁論を終了いたします。みなさま、お疲れ様でした。



















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