〈最優秀賞〉
博多女子高等学校2年 御手洗 智美
「御飯の時はテレビをつけてはいけない」という決まりがうちにはある。地震があったとか台風来ているとかでない限りめったにその決まりが破られる事はない。物心ついた時にはすでにそうなっていたから、別に嫌ではなかったし、友達のようにテレビをつけて御飯食べたいと思った事もあったけど、我が家の決まりは変わりそうにもなかったので、そのうちあきらめた。
朝御飯の時は、ニュースを聞く為にラジオがついている。ニュースを聞きながら家族がそれぞれに意見を言うので軽く討論のようになる。私も妹も口だけはいっちょまえなのでなかなかおもしろい。でも政治のニュースになると、お父さん以外は無言になる。お父さんが解説を入れつつアナウンサーの話を通訳してくれる。これがなかなか解りやすくて、公民が死ぬ程苦手な私でも理解できる。最後にそれぞれの一日の予定を言ってだいたい朝御飯の時間が終わる。
昼はそれぞれ学校や仕事場で食べるので、次にみんなが揃うのは夜だ。朝と違う事はお父さんがいない事とラジオがついていない事。夜御飯の時は、私と妹の学校での話がだいたいメインになる。クラスの事、部活の事、友達の事などで、特に隠し事はないと思う。食べ終わっても30分くらいは話している事が多い。そこでアドバイスをもらったり、逆にしたり、三人で悩んだりして、夜御飯が終わる。
何気なく過ごしている毎日の中で、自分の家の「御飯の時間」の事なんてなかなか気にする人はいないと思う。でもちょっと考えてみたら、うちの「御飯の時間」は家族にとってかかせない「大切な時間」になっていることに気づいた。
家族そろってテーブルをかこんで、みんなで何だかんだ言いながら御飯を食べる時間。これが今の私の一番の大切なものだ。