平成18年度入学式 小野寺歩さん「新入生へのメッセージ」

2001年英語英米文学科卒業,トリノ五輪カーリング日本女子代表主将

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。本日、皆さんの新しい門出にあたり、メッセージを述べさせていただくことになりました、本校卒業生であり、ご紹介預かりましたとおり、トリノオリンピックカーリング日本女子チーム代表主将の小野寺歩です。よろしくおねがいします。

このお話をいただいたとき、この大学の卒業生として光栄に思い、同時に4年間をここ札幌学院大学で歩んでいかれるみなさんに、私から何か伝えられることがあればと考え、この場に立つことを引き受けました。私はただのアマチュア選手の一人です。大勢の皆さんの前でお話しするのは今日が初めてです。聞き苦しいこともあるかと思いますが、少しの間、どうかお付き合いください。

さて今日は、私のこれまでのカーリングにかけてきた「夢」について述べさせていただきます。

イタリアで開催されたトリノオリンピックから、早いものでもう2ヶ月がたとうとしています。 カーリングを通し、私をご存知の方もいらっしゃると思いますが、この場を借りて皆さんに感謝の言葉を述べさせていただきます。本当に応援、ありがとうございました。(会場から拍手がおこり)ありがとうございます。

2002年のソルトレークオリンピック終了後、私はすぐにトリノオリンピックを目指すことを決めました。それは、ソルトレークオリンピックに出場したものの、納得のいくプレーが出来ず 、胸を張って日本に帰ることが出来ない自分がいたからです。

ちょうどその時、青森行きの話をいただきました。引退か、現役続行か、とても悩んだんですけれども、引退することは簡単ではありますが、現役続行の道が、私にもわずかながらにあったということに賭けようと思い、海を渡って青森に行きました。

しかし、その日から代表選考会の昨年11月まで、トリノオリンピックに出場できるという保障は全く有りませんでした。そんな中での丸3年間、毎日毎日、トリノオリンピックでプレーすることを考え、そのためにすべきことに全力を注いできました。それは、たとえオリンピックに出場できなくても、それまでの道のり、過程である4年間に挑戦したかったのです。そして今、こうして代表として皆さんの前に立つことが出来ました。

私はこの4年間、私の夢に賛同し、青森に来てくれた道産子のチームメイトとともに、苦しい練習、合宿をこなしていく中で、メダルに絡むことのできるチームだという確かな手ごたえを感じていました。しかし、トリノオリンピックでは7位という成績に終わり、勝敗を決める一投を投じる大切なポジションである私は、主将として数々のチャンスを物に出来なかった責任を感じています。

しかし、幸いにも、こうして皆さんにお会いできる機会を与えられるほどカーリングは日本中に広まりつつあります。帰国してから毎日、多くの方から「感動をありがとう」というお言葉をいただきます。不本意な結果にもかかわらず、私たちに対する暖かい言葉に、大変救われています。同時に、メダルを取らないと意味がないと思っていた私ですが、メダル以外にも味わえる感動がオリンピックにはあるということを皆さんに教わりました。

私がこれまでの経験を通して皆さんにお伝えしたいことは、結果を恐れて夢をあきらめずに、まずは夢への、それまでの過程に挑戦する勇気をもって欲しいということです。カーリングをしているとき、私は「これをミスしたら」と結果を考えるのではなく、今、自分はこの一投のために何をすべきかということを意識しています。夢も、それと同じだと私は思います。かなう、かなわないとはじめから決めつけるのではなく、まずはそのために何をすべきかを考え、行動してほしいと思います。

そしてもう一つ皆さんに伝えたいことは、その夢に対して情熱を持つことです。夢をかなえるための情熱は、自分を動かし、周りを動かし、時に夢をたぐり寄せてくれるものだと実感したからです。皆さんの中には、夢を追っている人、夢に出会う人、様々だと思います。今日の私からのこの2つのメッセージがいつか皆さんの人生に役立てば嬉しいです。

私の今までの人生を振り返ると、ここ札幌学院大学で過ごした4年間も、かけがえのない時になっています。私の夢をいつも応援してくださった大学の皆さん、友達、沢山の思い出に出会えたからです。

青森に行って辛かった時、帰りたいと思った時、たくさんありましたが、「これが私の選んだ道」と最後まで諦めることなくここまで来ました。皆さんも理由はどうあれ、自分が最後に選んでこの場にいると思います。これからの4年間、これからの人生、すべてのことに意味があると思います。その時その時を大切に、思い切り楽しい4年間を歩んでいってください。そして、くじけそうになったとき、「この大学を選んだのは自分だ」ということに改めて一度立ち止まり、考えていただきたいと思います。

皆さんの新しいスタートの日に、こうして一卒業生としてこの場に立てたことを、もう一度、改めて誇りに思います。皆さん、これから4年間、頑張ってください。私もこれから、皆さんの先輩としてお手本となるような人生を歩んでいきます。

今日は本当にありがとうございました。

(2006年4月4日 於:北海道厚生年金会館) 

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