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心理学で見る 歴史の裏

東日本大震災と災害心理学

東日本大震災の際、被災者は心に大きなストレスを負いました。 災害時には、被災者の心のケアを目的とした、災害心理学の視点が重要になります。 避難所での生活における精神的ストレス緩和から、大切な人を亡くした方の心を支えたり、 心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対策など、多岐に渡る面で心理学が必要とされます。

被災者が向き合う心の問題

災害時には誰しもがパニックや焦り、恐怖やストレスといった精神的な要因から、頭痛や腹痛・吐き気・下痢などの症状が現れる被災者が多く、医療関係者との連携も必要不可欠になってきます。また、過度のストレスによって、正常な精神状態を保つことが難しく、揉め事などの二次災害へ繋がってしまうケースも見られます。
被災者の中には 、急なストレスにさらされたために、ASD(急性ストレス障害)という、心的外傷(トラウマ)体験の追体験(フラッシュバック)や悪夢、過覚醒状態が見られることがあります。これらの症状が長引かないようにするためにも、早期に日常的な生活習慣を回復できるように支援することが大切であると考えられています。

次の災害に備える心理学

東日本大震災では、心理学的視点から見て多くの課題が残りました。 ひとつは避難所での共同生活における、温度・プライバシー問題・人間関係によるストレスへの対策。避難所の過ごしやすさの重要性は、過去の災害時から言及されており、被災者に対するリスニングは今迄も多く行われてきました。 災害に直面する度に、避難所関連の状況は改善されているものの、まだまだ改善の余地は多く、現在も研究が続けられています。もうひとつが「正常性バイアス」「多数派同調バイアス」「愛他行動」「親和欲求」といった心理現象です。 正常性バイアスとは、異常事態に陥った際、心の平静を保つために「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」と無意識下で自身を洗脳してしまうもので、状況の悪さを過小評価してしまう心理現象です。多数派同調バイアスは、「周りが動かないからまだ自分も動くべきではない」「誰かが動いたら動こう」といった、周りに合わせて状況判断を行うというもので、東日本大震災においても多数派同調バイアスが被災者の心理に影響したと考えられています。愛他行動は、危機的状況におかれた際に、自分の命よりも他者を優先するという心理で、これに加え、親和欲求という誰かと一緒にいたいと思う心理が影響し、高齢者の多い地域は特に被害が甚大だったと言われています。
他にも、様々な課題がありますが、このような心理学的教訓を周知・根付かせ、万が一、次の災害が起こった際、同じことが繰り返されないよう、役立てることも心理学に従事する人間の役割です。

長期的な心のケアの視点

このような災害による心のストレスは、災害の直後には大きな関心を集めますが、一過的な支援で終わっては意味がありません。被災者は何事にも喪失体験を味わっており、なかなか癒えるものではありません。生き残った人々の中に「自分だけが・・・」という罪悪感(サヴァイヴァーズ・ギルト)にとらわれる人が多いことも知られています。災害によって住居をうばわれることも少なくなく、コミュニティの崩壊が孤独感や無力感を深める要因にもなっています。
ココロちゃんココロちゃん

教員からのコメント

災害の被災者の心のケアにおいては、急性期のストレス反応から長期的な喪失感まで、それぞれの時期で異なった支援の視点が必要になります。そして何よりも、支援者の希望を捨てないねばり強い姿勢がもとめられるでしょう。
心理学の先生たち

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