Graduate School Of Regional Management
地域社会マネジメント研究科長
大國 充彦
地域社会マネジメント研究科は2003年に設置され、以来、「持続可能な地域社会づくり」をテーマに教育・研究を進めてきています。この間、日本社会の人口減少傾向が明らかとなり、テーマとして掲げている「持続可能」という文言自体が問われ始めています。「持続可能な地域社会づくり」とはどのような意味を持つのでしょう。その地域で生活している人びと、働いている人びと、かかわりのある人びと、それらの人びとの個別の生活の質を維持・向上しようとすると、地域の持続可能性の要請とは相容れない事態が起きているようにも見えます。
大学院で学修を深め研究を進めようとする院生の皆さんにとって、大学院で作成する修士論文のテーマにかかわる事柄はとても大事であることは確かです。しかし、それ以上に重要なことがあります。それは、自ら学ぶ力を意識して高めていくことです。修士論文は作成してしまえば過去のものとなって過ぎ去っていきます。けれども、大学院で培った、自分で学ぶことができる力は、皆さんに一生ついていってくれます。意識していれば、学ぶことはどこでもいくらでも可能です。
自ら学ぶ力については、いくらでも分節化することはできます。メモをとったりネット検索をする情報収集能力であったり、日本語を読んだり聴いたりする際の精緻な読解力であったり、自分と他者とのやり取りの中で共通点、相違点と特異点を見つけるための日本語運用能力、論理的思考能力であったりとさまざまなリストを作ることはできますし、それにしたがって個別の能力を展開させることも可能ではあります。とはいえ、自ら学ぶ力というものは、個別の能力の組み合わせだけで構成されているものではないように感じます。
大学院を含めた大学という場所は、埋もれた資源の塊のようなものです。図書館や院生研究室というハードウエアも、使わなければ無機質な空間に過ぎません。院生の皆さんが上手に使ってこそ活きてきます。教員もまた、皆さんが上手に発掘してこそ活きてきます。授業だけが教員の役割ではありません。指導教員はもとより、その他の教員もまた眠れる資源として皆さんの前に横たわっています。どの教員を掘り起こすのか、それは皆さんの個性に従って自由に決めることになるでしょう。上手に使ってみると、自ら学ぶ力の具体例を知ることができるかもしれません。皆さんが掘り下げても目減りしないだけの教養を持った教員が、本研究科には所属しています。皆さんの学ぶ力を高めるために、大学の資源を積極的に活用してほしいと思います。
札幌学院大学大学院地域社会マネジメント研究科を修了して
変化の激しい社会の中で、若き日に大学で習ったことも通用しないことが多くなったと感じておりました。仕事も忙しく学びの機会もなかったのですが、札幌中心部の大通にある社会連携センターのコミュニティ・カレッジを受講したのが契機で本学に惹きつけられ、大学院の聴講生となりました。そこで優れた先生方、先輩がおられることを知り、また多くの社会人が地域の課題と向き合い真剣に研究する姿勢にも心を打たれました。
私自身もかねてから地方の過疎化という厳しい状況下での教育のあり方に関心を持っていたことから、社会人入学をして、学校と地域の関係から教育を考えることにしました。指導教授のご指導のもと、バックボーンとなる理論、課題整理の方法、先進事例などを学びながら解決のための研究調査を進め、何とか論文まとめることができました。
その結果、自らの長年の経験の上に理論に基づくフレームの中で「教育と地域のあり方」を考えることができ、社会資本として地域に必須な教育(制度)を「新しい公共」の正の側面を取り入れてサスティナブルディベロップトに結びつける確たる考えを自分のものとするこができました。その間、還暦にして初めて石川教授にICTを学んで世界が広がるとともに、法政大学などとの「連携講座」を通して他の大学院の教授陣や全国各地で真摯に研究に取り組む人々の姿に触れ、多いに触発されました。
さらに、フィールド調査により真剣に地域のために汗を流している方々と直かにお会いでき、歳は違っても共に研究室で共に汗を流した学友も得て、新たなネットワークも人生を互いに生き抜く大きな支えや絆となることを改めて実感しております。
札幌学院大学大学院は「自ら求める意思」さえあれば、学びの過程で一段一段丁寧に指導を受けることができ、温かい立派な教授陣のいる「学びの場」です。
あなたも本学で生涯学習社会の時代にもう一度学ぶ機会を得ることをお勧めいたします。