1.ガイドラインの目的

札幌学院大学は、あらゆるハラスメントに反対し、その防止に全力をあげて取り組みます。

札幌学院大学は、構成員がその人格や人権を尊重され、かつ豊かで快適な環境の下での勉学・研究・課外活動・就労が保障されることをめざして、ハラスメント防止ガイドラインを制定します。

2.適用の範囲

本ガイドラインは、本学の学生(学部学生、大学院生、科目等履修生、特別科目等履修生、聴講生、研究生、外国人留学生など)、教員(専任教員、英語講師、特別任用教員、非常勤講師、TAなど)、職員(専任職員、契約職員、パートタイマー、アルバイター、特定業務職員、労働者派遣契約又は業務委託契約により本学で働くスタッフなど)及びその他の関係者(役員、評議員、生協職員、部活動の監督・コーチなど諸活動に関わりのあるすべての人)、すなわち本学に関わりのあるすべての者(以下、本学構成員と呼ぶ)を適用の範囲とします。キャンパスの内外を問わず、本学構成員が相談者又はその相手方となったハラスメントに対して適用することとします。

3.大学の責任と構成員の義務

札幌学院大学は、ハラスメントに対する大学の責任を自覚し、ハラスメントの防止のための教育・研修、そして申し立てられた苦情の解決に取り組みます。これを実現するために、以下の組織を設けます。

▼ハラスメント対策本部は、あらゆるハラスメントの防止と対処のための全学的な施策全般について責任を負います。

▼ 苦情が申し立てられた場合にはハラスメント対策本部内に調査調停委員会を設け、事実関係の調査、相談者への助言・指導、加害者等への注意、調停などを行います。

▼ 苦情の申し立てまたは相談窓口としてインテイカーを設け、相談しやすい環境を整えます(こちらの機構図を参照)。

さらに、本学構成員は、ハラスメントを起こさないように努める義務を負います。 

4.ハラスメントとは何か?

ハラスメントとは、「嫌がらせ」「いじめ」を意味します。相手側の意に反する不適切な発言、行為等を行うことによって、相手側に屈辱や精神的苦痛を感じさせたり、不快な思いをさせ、人権を侵害することです。ハラスメントには以下のような4つの種類があります。いずれかにはっきり該当している場合もあれば、二つ以上に複合して該当する場合もあります。

(1)セクシュアル・ハラスメント
性的な言動や性的な画像・文書を掲示・提示することにより、相手の勉学や職務環境を悪化させることです。
環境型セクシュアル・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。

■ 対価型セクシュアル・ハラスメント

教育・研究・職務上の優位な立場を不当に利用して、あるいは学業成績や教育研究上の指導または人事評価などの利益または不利益を条件に性的な誘いがけや要求をすることです。

対価型セクシュアル・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。


Q1.女子学生が、コンパの後、同級生や男性教員と一緒にカラオケに行った。男性教員は、歌いながら女子学生の手を握ったり胸を触ったりしたので、抗議すると、男性教員は単位認定の話を持ちだした。
A. 女子学生が専攻する科目の教員として優位な地位を利用したセクシュアル・ハラスメントです。

Q2.クラブの先輩の男子学生が後輩の女子学生に、激励の意味で肩をポンと叩いたり、お疲れさんとねぎらいの意味で肩を揉んだ。後輩の女子学生が抗議すると、先輩の男子学生は、大会出場メンバー選出に有利な話をしてきた。
A. 先輩、後輩という優位な力関係を利用したセクシュアル・ハラスメントです。

Q3.職場で男性上司が女性部下に交際を求め、拒否すると、仕事上の嫌がらせをされるようになり、大事な仕事を与えられなくなった。
A.上司と部下という優位な地位を利用したセクシュアル・ハラスメントです。
(2)モラル・ハラスメント
年齢、出身、身体的特徴、趣味嗜好、国籍などに関連した不当な言動により、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力です。無視などの態度や人格を傷つけるような言葉など、精神的な嫌がらせ・迷惑行為を含みます。

モラル・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。


Q1.男子学生が、大学に入学した時に参加した合宿オリエンテーションで、自己紹介をした際、出身地が田舎だったため、出身地を知っている人はいなかった。その後、彼が何か知らないことがあると、友人や教員から「田舎者だから」等と言われるようになった。
A.出身地や国籍などをからかう行為はモラル・ハラスメントです。

Q2. 学生A君は、生まれつき内股に歩き、笑う時口元に手を当てます。A君が学校の廊下を歩いていた時、正面から歩いてきた女子学生に「女っぽ~い」と笑われました。
A.身体的特徴をからかう行為はモラル・ハラスメントです。

Q3.大学4年生のAさんは、ゼミで一番に就職先が内定した。それを知った同じゼミのBさんは、「どうせコネで入ったにちがいない」とまわりの友達に言いふらした。
A.根も葉もないうわさを流すことは、精神的な嫌がらせにあたりモラル・ハラスメントです。

Q4.募金やボランティア活動に誘われたが断ったところ、口をきいてくれなくなり、必要な連絡も人づてやメールでくるようになった。
A.無視などの行為はモラル・ハラスメントです。
(3)パワー・ハラスメント
教職員等が職務上の地位もしくは権限や数的優位を利用して、これらに抗し難い地位にある教職員等に対して行う不当な言動です。このような力関係を前提としたパワー・ハラスメントの成立要件として、以下の点が挙げられます。

1.職場や大学における力関係を利用したものであること。
2.相手方の人格や尊厳を傷つける言動や、相手方が精神的な苦痛を感じる言動であること。
3.本来の業務範囲を超えたものであること。

暴力を除く事例では、その言動が本来の業務の範囲や業務上必要な措置であるか否か、あるいは叱咤激励として許容される範囲か否かといった点が争点となるため、日頃からハラスメントに対する意識を持って業務を行っていただくことが重要となります。

パワー・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。

Q1. 部活動が終わって、他の部員や先輩に飲み会やドライブに誘われた。あまり行きたくなかったので、断ったところ翌日から、無視されたり、いわれのない誹謗中傷を受けたりした。
A. ある集団がその数的優位を利用したり先輩という立場を利用したりして、特定の人物を無視や誹謗中傷することはパワー・ハラスメントです。

Q2. 上司から「夜遊びをやめろ」「その友達とは付き合うのをやめろ」とプライベートなことまで事細かに注意を受けた。「今後は仕事に支障が出ないようにする」と伝えたが、友達付き合いは辞めるつもりはないと言うと、数十分間も叱責を受けた。
A. 上司が部下にプライベートなことを注意したからと言ってパワー・ハラスメントであるとは言えませんが、プライベートなことにまで上司の権限は及ばないため、その注意に従わないからと言って必要以上に叱責するのはパワー・ハラスメントです。

Q3. 上司から明らかに遂行困難な仕事を与えられたので、「これは自分一人では不可能なことなので、できません。担当者を増やすなどの対応をしてほしい」と告げたところ、その後は本来自らの担当であるはずの仕事が与えられない。上司に理由を聞いても、自分に非があるような理由を告げられない。
A. 正当な理由もなく仕事を与えないと判断できる場合や明らかに困難な仕事を与えるといったことは、上司の適切な業務範囲を超え、就業環境を悪化させていると言えるため、パワー・ハラスメントです。

Q4. 新人職員が上司から、「こんなこともできないのか、大学で何を勉強してきたんだ」「辞めた方がいいんじゃないか」などと他の教職員の前で頭ごなしに暴言や罵倒を受ける。本来できる仕事もうまくこなせず、精神状態も悪くなり、うつ病にかかってしまった。
A. 大声を出すこと自体はパワー・ハラスメントではありませんが、それが通常の業務の範囲を超えていると判断されるような場合や、人権侵害となるような言葉の暴力の場合はパワー・ハラスメントです。また、精神的な病気にかかってしまっている可能性がある場合は、病院に行って診察を受け診断書を書いてもらうことも重要です。
(4)アカデミック・ハラスメント
教職員等が職務上の地位もしくは権限を利用して、これに抗し難い地位にある学生等や教職員等に対して行う不当な言動です。パワー・ハラスメントが労働関係を前提に発生するのに対し、アカデミック・ハラスメントは教育・研究上の関係で発生します。アカデミック・ハラスメントの成立要件として、以下の点が挙げられます。

1. 教育または研究における上下関係を利用したものであること。
2. 相手方の人格や尊厳を傷つける言動や、相手方が精神的な苦痛を感じる言動であること。
3.業務上または教育・研究上必要な限度を超えたものであること。

「教職員等→学生等」のアカデミック・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。

Q1. 講義をまじめに受けている学生が、服装がルーズであることを理由に、教員から「教室から出て行くように」と言われた。やむなく学生はその教室から出て、その講義を受けることができなかった。
A. 講義を受ける意思や態度のある学生に講義を受けさせないことは、アカデミック・ハラスメントです。ただし、私語が多く講義を妨害しているようなケースで、教員が「出て行け」と言った場合は、「静かにするように」という真意があると考えられ、他の学生の修学環境を守るために教育上必要な措置と考えられますので、アカデミック・ハラスメントには該当しません。

Q2. 学生が卒業論文を書きたいので指導してほしいと指導教員に相談したところ、教員が指導を拒否した。そこで、卒業論文を書くことは諦め、就職用の推薦書を書いてほしいと頼んだところ、これも教員が拒否した。
A. 正当な理由もなく学位論文の指導をしなかったり、受理をしなかったりすることや必要な文書を作成して渡さないことは、アカデミック・ハラスメントです。

Q3. 学生がゼミ論文を執筆し、指導教員に助言を求めたところ、「バカみたい」「幼稚園児でもこれくらい書けるだろ」などと罵倒された。
A. 教員が論文の内容についてきちんとコメントや指導せず、暴言を吐くことはアカデミック・ハラスメントに当たります。また、教員が正当な理由もなく単位を認定しないような場合もアカデミック・ハラスメントです。

「教職員等→教職員等」のアカデミック・ハラスメントの具体例としては、以下のものが挙げられます。

Q4. 研究テーマの似ている学部長から自分の執筆中の論文を見せるように言われ、見せたところ、「この研究は意味がない」と言われ、研究テーマを変更して、学部長の実証研究を手伝うように言われた。
A. 立場を利用して研究成果を取り上げたり、研究テーマを押しつけたりすることはアカデミック・ハラスメントです。

Q5. 教員Aは教員Bから学会活動やBの担当である学内行政を手伝うよう頼まれた。従わないと、学会でのAの立場を悪くする旨の発言を受けた。過去に、BはAの論文を指導してくれた教員でもあったため、Aはやむなく従った。
A. 過去の立場を利用して行われるアカデミック・ハラスメントです。教職員間で生じるハラスメントでは、単に学長・学部長・教授・准教授といった形式的な上下関係だけでなく、過去の職歴や師弟関係等から発生する実質的な上下関係が影響する場合があります。
(5)アルコール・ハラスメント
Q6. サークルの新歓で、酒を飲むよう強要された。(雰囲気含む)
Q7.一気飲みコールをされて、飲まざるを得ない状況に追い込まれた。
Q8.酔っ払った同僚から暴言を吐かれた。

A.以上の例はすべてアルコール・ハラスメントに該当します。アルコール・ハラスメントの定義は以下のとおりです。
  1.飲酒の強要
  2.イッキ飲ませ
  3.意図的な酔いつぶし
  4.飲めない人への配慮を欠くこと
  5.酔った上での迷惑行為
(6)マタニティー・ハラスメント、ケア・ハラスメント
出産・育児休業、介護休業等の取得をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、妊娠・出産・育児・介護などを理由とした解雇や雇い止め、自主退職の強要で不利益を被ったりするなどの不当な扱いを意味することです。

5.ハラスメントを起こさないために

ハラスメントは、人権を侵害する行為であり、大学構成員が良好な環境の下で教育を受け、研究し、または就労することを妨げる行為です。
(1)認識をもちましょう
大学に学ぶ者、研究する者、また働く者として、他人を慮り、人との適切な距離を維持することが大切です。
男女は対等な人間であり、大切なパートナーです。人を性的な関心の対象としてのみ捉えることは、人格を認めないことになります。
教員と学生、上司と部下は、学問上または職務上の経験に差があるにしても、互いに尊重すべき個人です。指導や指示をするときは、経験豊かな人間に相応しい態度を示しましょう。
(2)点検してみましょう

言動の受け止め方には、個人や男女間・世代間で差があります。ある人の基準がすべての人の基準とは限りません。不快な思いをした人が、それを明確に表せないこともあります。相手に不快な思いをさせていないか、相手の合意があると思い込んでいないか、点検してみましょう。

▼異性は何よりもまず、同じ時代・同じ場所に生きる対等なパートナーであると認識していますか。

▼行動するとき、または発言するときに、相手の立場に身をおいて、不快感を抱かせていないかどうか、考えていますか。

▼職務上必要な指示を、適切な言葉でしていますか。不可能な作業を強いてはいませんか。疑問や反論を出されたとき、合理的説明ができますか。

指導上必要な指示を、適切な言葉でしていますか。不可能な課題を出してはいませんか。疑問や反論を出されたとき、合理的説明ができますか。

(3)授業・研修を受け、考えましょう
初年次に行われる授業、教職員を対象とした研修を受け、ハラスメントについて考えを深めましょう。不快な言動や疑問に思う言動に接したら、そこにどのような問題があるか、自らの考えをまとめ、ことばで表せるようにしておきましょう。それが、自らの身を守り、周囲の被害者を守り、加害行為をやめさせることに繋がる場合もあります。
構成員に配付される本冊子『ハラスメント防止ガイドライン』を身近なところに置いて活用しましょう。

6.ハラスメントに遭遇したら

誰でもハラスメントに遭遇する可能性があります。それには二つの場合があります。一つはハラスメントの被害者になった場合、もう一つはハラスメントを見聞きした場合です。以下に、それぞれについて取り得る手段を説明します。

(1)ハラスメントの被害者になった場合
1.ハラスメントは被害者に落ち度がなくても発生します。ハラスメントを受けたことで自分を責める必要はありません。相手方の言動を不快と感じたら、「やめてください」と言葉や態度ではっきり伝えましょう。

2.いつ、どこで、だれから、どのようなことをされたのか等について記録をとりましょう。

3.信頼できる人に相談しましょう。

4.インテイカー(相談窓口)を利用しましょう。インテイカーは面接・手紙・電子メールなどで相談を受けつけます。相談は匿名でもかまいません。あなたの氏名や相談内容など、プライバシーは完全に保護されますので、安心して相談してください。
(2)ハラスメントを見聞きした場合
▼相談者や相手方の感情を尊重し、みだりに他人に話したりすることは慎みましょう。第三者に話を漏らすことによって、新たなハラスメントが発生する場合があります。

▼インテイカーに相談、またはハラスメント対策本部に苦情申し立てや調停の申請をすることができます。

相談、調停の流れは以下のようになります。

1.インテイカーは相談者の相談を親身になって聞きます。相談者の訴えを否定、非難はしません。また相手方に対して相談者がとるべき手段などを指示することはありません。相談者の思いをそのまま受け止めます。

2.インテイカーは相談内容を報告書にまとめ、ハラスメント対策本部に送ります。

3.インテイカーからの報告書を受けて、または直接の相談や苦情申し立てを受けて、ハラスメント対策本部は調査調停委員会を立ち上げ、事実関係の調査、相談者への助言、加害者等への注意、調停を行います。事実認定が困難な場合でも、それを虚偽の申し立てとは見なしません。いずれの場合も被害者の意思を最大限尊重するとともに、被害者および相手方のプライバシー保護に留意します。

4.調査調停委員会によって行われた処理は、相談者に報告します。

5.ハラスメント対策本部およびインテイカーは、案件の処理が終わった後、規程に従って記録を破棄します。


以下は、ハラスメントに遭遇した場合のQ&Aです。

Q1. 相談をしたいのですが、誰がインテイカーなのかわかりません。
A. インテイカーの名前と連絡先は、新年度の学生支援課ガイダンス時に配布される冊子巻末に掲載されています。
また、大学ホームページでも紹介しています。

Q2. インテイカーよりも教育支援課や学生支援課課の職員さん、担任の先生や友達などのほうが話しやすいのですが。
A. 最初は話しやすい人に相談するのがいいでしょう。しかし問題が継続するようであれば、対処が必要になるかもしれません。その際はインテイカーにご相談ください。

Q3. 教職員です。学生から相談を受けましたが、自分では対処の方法がわかりません。どうしたらいいですか。
A. インテイカーまたはハラスメント対策本部にご相談ください。その際、被害者の要望があれば、証人またはサポーターとして同席いただけたらと思います。

Q4. インテイカーやハラスメント対策本部は大学の信頼を傷つけないために問題の隠蔽をするのではありませんか。
A. それはいたしません。相談者の救済と心のケアを最優先します。また、警察や弁護士など外部に相談するのが適切と判断した場合は、被害者の同意を得た上でそのように対処します。

7.ハラスメント対策に関する機構図