〈最優秀賞〉
北海道森高等学校3年 近藤 友美
家業が農業。それがとても嫌だった。親が仕事が終わって家に帰ってきた時の泥姿と汗や植物独特の匂い等の汚らしさ。学校が休みの日には草むしりや収穫の手伝いをしなくてはならなくて、つまらなかった。手伝いといっても当時小学生の私は親の半分位しか作業が出来ず、せっかく手伝っているのに、役に立たないこともおもしろくなかった。
年月が経ち、高1になった私は一つの野菜と深く関わることになった。その野菜はカボチャだった。春に種植えをし、芽がでるよう温度管理と水やりをして、上手く育ち花が咲くと実がなるように雌花に花粉をつける。一つ一つが単純な作業だが量があり、きつい。そして天気次第でそれが無駄に終わってしまうこともあった。自然が相手で思うようにいかない。それでも私達家族はカボチャを育てていった。カボチャに合った肥料の量や質を考え、空の様子を見て気温がどうなるのかを予想し管理する。育ち具合を見て次に何をするべきかが両親にはわかっていた。たまに上手くいかず嘆くこともあるがそれは本当に人の力ではどうしようもない場合で、そうやって両親の働く姿を見るのは初めてだった。
そして収穫が始まった。枝から穫ったばかりのカボチャは温かかった。当たり前のことだが植物が生きていることを強く感じた。収穫を喜んだ。箱に詰めて出荷する時、規格外のカボチャを見るのが残念でそう父に言うと「これは商売だからな。それに全てを上手く育てることはできない」と答えた。規格外の一部を家で食べるとおいしかった。食べ物を作ったという思いになる。私は食べ物を作る仕事が世の中で一番優秀なものだと思っている。工業や医療なども大事だが、生きていなければ無意味なものだ。生きることは食べること。このことを支えているのは農業や漁業や酪農だ。私はその世界に少しだけでも関わっていることを大切に思う。