地域マネジメントの実践例
●チャタヌーガ市の挑戦地域マネジメントの実践例
 数年前にNHKのBS放送でアメリカのテネシー州にある「チャタヌーガ市」のまちづくりへの取り組みが放映された時の記憶がまだ鮮明に残っています。
それ以来、何十ともいえる世界の先進都市の事例を見てきましたが、それでもなお忘れることが出来ず、1年目のコミュニティリーダー論の授業で取り上げました。
重工業(鉄鋼)がやがて産業公害を呼び込んでしまい、見る影もなく衰退した都市に立ち上がった市民の挑戦の記録でした。

 今で言うPPP(官民協働)を絵に描いたように進めたもので、10年くらいの間に全米でもトップクラスの住み心地の良い町に変身したのです。
公害運動から始まり、それが具体化するまでにはかなりの年月が必要でしたが、リーダー(ジーンロバーツ市長)の出現により状況は一変します。
市民の強烈な後押しを受けて、専門家(ワトソン教授)が好ましい形で参画し、地元のリソース(資源)をたくみに生かし、環境重視の美しい町が誕生しました。

 チャタヌーガベンチャーによる1万人市民アンケート、ビジョン2000、環境条件を満たした工業の誘致、ダウンタウンの公共交通に電気バスの開発、リバーキーププロジェクト、いろいろな財団による支援、象徴となったウォルナットブリッジの修復保存、低所得者のための住宅政策、わずかな議員による公開の議会運営など枚挙に暇がありません。

 先進事例を他人事としていくら調べても身にならないことは、多くの人はとっくに気づいているはずですが、少し視点を変えて、自分の町にどう応用するか、どのようにすれば実行できるかについて真剣に取り組む必要があります。
自らの血と汗の結晶であるべきことは論を待ちませんが、今や北海道中の町が変身を迫られています。
変化に通用しなくなった仕組みをブレイクスルーしてきた多くの町の挑戦の中でもひと際印象に残る事例です。

札幌学院大学大学院 地域社会マネジメント研究科
      「プロジェクトマネジメント論」担当  高須 喜久男