経済学科

Department of Economics

【経済学科】標津町ゼミ調査合宿:日本遺産「鮭の聖地」を切り口にフィールドワークに行ってきました

2024.09.24

お知らせ

標津町・羅臼町の調査は3年目に

朝日

標津沖の水平線から昇る朝日(朝4:30)

 経済学科の地域研究プロジェクトの一環として、大國ゼミが9月2日から9月5日の3泊4日の日程で、標津町・羅臼町の調査合宿に行きました。調査合宿は2022年度・2023年度に引き続き3年目となります。今年は、初めて調査合宿に行く2年生と2回目の3年生の2学年がフィールドワークに行きました。
根室市・標津町・別海町・羅臼町の1市3町は、この地に残された文化財によって証明される、根室海峡沿岸の歴史文化ストーリーによって、2020年に文化庁の日本遺産として「鮭の聖地」を申請し認定されました。経済学科は、北海道に所在する大学のアクティビティとして道東地域での活動を行うために、日本遺産「鮭の聖地」を切り口にして標津町などを中心に学生の調査研究プロジェクトを立ち上げ実施しています。
大國ゼミではこの3年間、「鮭の聖地」の物語がそこに暮らす人びとの仕事と生活の中にどのように影響を及ぼしているのかに関心を持って、フィールドに入っています。

2年生は標津町の標津サーモン科学館と標津町ポー川史跡自然公園、3年生は羅臼町郷土資料館を視察
「鮭の聖地」のエコミュージアム構想の中でコア施設と位置付けられる標津サーモン科学館は、サケ科魚類と標津周辺に暮らす魚たちを展示する水族館であり、「鮭の聖地」のストーリーをたどるための起点展示も行っています。
サーモン科学館の大水槽

サーモン科学館の大水槽

松浦武四郎の蝦夷地地図を前に

松浦武四郎の蝦夷地地図を前に

鮭の一生に触れる

前半は、鮭のライフサイクルのレクチャーを受け、鮭の一生の中で外敵に対してもっとも脆弱な期間を、孵化事業を通して人の手で守ることによって、鮭の漁獲量を確保することを学びます。また、孵化して放流するときにはわずか1グラムの稚魚が、外洋に出て4年ほどして戻ってくるときには3キログラムになっています。増加した体重の2999グラムは海の栄養で育ったことを意味します。戻ってきた鮭は産卵後にクマなどに食べられ、クマの糞は森の栄養となります。生態系の観点から見れば、鮭を通して陸と海との間の重要な物質代謝が行われていることが明らかとなります。
後半は、日本遺産「鮭の聖地」のレクチャーを受けます。1万年前の縄文時代から、鮭との暮らしがこの地で行われ、今にいたるまでさまざまな様相を見せながらかかわりが蓄積されていることを学びます。中でも「標津番屋屏風」に描かれている江戸時代末の標津の中心街の風景は、中央の標津神社やその前の道路、中央やや左手の番屋など、今の景色にその名残をとどめていて興味深いです。
 
「標津番屋屏風」の解説を受ける2年生たち

「標津番屋屏風」の解説を受ける2年生たち

2年生は標津町ポー川史跡自然公園を見学

午後は2年生は標津町ポー川史跡自然公園を見学します。資料館では縄文時代からの土器などの出土品、食べたあとの鮭の骨、1789年のクナシリメナシの戦い、「標津番屋屏風」などの資料を解説していただきました。その後、徒歩往復1時間半の距離にあるカリカリウス遺跡の縦穴住居跡を見学する学生、資料館の展示をより詳しく見て回る学生など、自分の興味に従って見学します。
出土した土器の数々

出土した土器の数々

3年生は羅臼町郷土資料館を視察

他方、3年生は羅臼町郷土資料館を視察しました。郷土資料館では縄文時代からの土器、羅臼近海の魚類の標本展示などがあり、学芸員から解説を受けました。また、羅臼町で撮影された映画「地の涯に生きるもの」(1960年公開)を視聴しました。この映画では、当時の漁業の実態がそのまま反映されていて、現在の観点からは記録映画としての価値もあると捉えることができます。 

標津町まち歩き:標津神社から根室標津駅跡の転車台へ

初日の夕方は「標津番屋屏風」に描かれた標津のマチの中心地をまち歩きをして180年の時間の隔たりを同じ空間で受け止めます。 
「標津番屋屏風」と同じ位置にある標津神社

「標津番屋屏風」と同じ位置にある標津神社

その後、町役場の裏手にある根室標津駅跡の転車台とSLを見に行きます。転車台保存会の事務局長から解説を受けた後、転車台とSLに直接触ったり乗ったりして、在りし日の陸上交通の花形に思いをはせました。 
SLは電動で動かすことができます

SLは電動で動かすことができます

2日目は2・3年生ともに聞き取り調査

翌2日目は2年生・3年生ともに、標津町生涯学習センターあすぱるに調査対象者をお招きしてお話をうかがいます。 
聞き取り調査の様子

聞き取り調査の様子

漁師の奥さん方の集まりで、子どもたちに魚をたくさん食べてほしいと鮭コロッケなどを開発・販売しているしべつAmieの方、30・40代のグループTOMOSで、仕事の他に何かをして標津の良さを見つけ発信しようとする方、標津の水産加工販売の会社に勤める傍ら標津町観光ガイド協会に所属して来訪者にいくら作り・ホタテの貝剥き体験のガイドを行っている方、農林水産省で酪農・乳業行政に従事したあと標津町の酪農家と結婚し酪農経営を行いながら酪農民宿を立ち上げた方、デザイナーでかつカフェと民宿のオーナーでかつ転車台保存会の事務局長の方、姉はサーモン科学館に勤務し妹はスナックを経営している姉妹の方、サーモン科学館の副館長であり経済学科の地域研究プロジェクトに的確なアドバイスをいつもくださっている方からお話をうかがいました。


 

「夜の部」のお楽しみ

標津町の最後の夜、20時から夜の部を行います。調査対象者で来てくださった方が経営する「スナックばんぶぅ」には2年生が、昨年も訪れた「café & musicbar site」には3年生が訪れ、地元の方やお店の方との交流を楽しみました。「スナックばんぶぅ」には今年の卒業生で、昨年・一昨年の調査合宿に参加し4月から標津町役場に勤務している先輩も来てくれました。
夜の部で楽しむゼミ生

夜の部で楽しむゼミ生

標津町の皆さまが気持ち良く受け入れてくださったことに感謝します

今年も標津町の皆さまがゼミ調査合宿を気持ち良く受け入れてくださって、調査研究を無事に終えることができました。心から感謝いたします。標津でお話をうかがった方々は皆さん、自分からやることを見つけて自分でやろうとしその中で知り合いや知り合いの知り合いのネットワークを広げて活動していると思います。そのような関係の積み重ねが次の世代の標津町を作っていくことになると思います。
 また、今回の調査合宿をコーディネートしてくださった一般社団法人南知床標津町観光協会は、サーモン科学館の視察に釧路新聞、転車台の見学に北海道新聞の記者の方々の取材を実現してくださり、メディアにもゼミ調査合宿が取り上げられました。

学生たちは標津で経験したことを整理して、自分はいったい何を学んだのかを問い続けてもらえると良いと思います。2年生・3年生ともに年度末の完成を目指す「調査報告書」に向けて、後期のゼミの授業で自分の経験と真っ直ぐに向き合い掘り下げていってほしいと思います。
 
朝日を浴びて

朝日を浴びて

  • 発行日: 2024.09.24
  • 経済経営学部 経済学科