1月23日(金)の経済学特別講義(最終回)(3講時(13時10分から14時40分))において,今年度の経済学特別講義のまとめを行いました.
最終回では,第2回の「日本の人口減少と財政悪化がもたらす地方の将来」から第14回の「これからの北海道経済~データで見る北海道経済~」までの講義の内容を講義のコーディネータの観点からまとめたものです.日本の人口減少が名目GDPと物価水準におぼす影響を総需要と総供給分析で簡潔に示した後に,人口減少それ自身が物価を引き下げ,GDP水準を引き下げ,デフレと平成不況をもたすことを示した後に講義のまとめを行った.人口減少が名目GDPを引き下げ,平成不況期に日本は財政赤字を増幅させ,国債(長期債務)の対GDP比を200%超えさせ,国債の重圧の中で経済の舵取りを日本政府は余儀なくされた.第2回では,歳入と歳出から国の財政状態を検証し,国の財政赤字の状況を確認した後に財政赤字の解消方策を論じました.その解消策の一つとして多くの論者は地方分権政策が挙げられるが,国が公債依存している限り地方への財源移譲はうまく,仕事量のみが増加するがけです.まず国の財政赤字の解消(国債依存の解消)が先決という見解を紹介しました.
第3回と4回では,金融行政,北海道の金融機関の構成,および北海道の金融機関の自己資本率,不良債権比率や預貸率などの特徴について説明し,北海道の金融機関の自己資本率は平均よりも高く,不良債権比率は平均比率よりも低いとなり,概して北海道の金融機関は良好であると説明し,さらに金融商品についての基本的内容が示しました.第5回では,その上で,金融商品の一つにもなる国債(公債)の発行(フロー)や累積残高(ストック)の観点から国債依存社会の現状につて説明しました.国債の円滑な市中消化の促進のために市場との対話:国債市場特別参加者(大手証券会社,大手銀行など)や国債投資懇談会や国債トップリテーラー会議,さらに多様な国債商品を多様な層に提供などの国債管理政策の概要と,その上で財政健全化,すなわち,基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化から財政収支の黒字化を達成しようとする中期財政計画を確認した後に,経済成長が財政赤字を解消し,財政収支の黒字化する可能について説明しました.さらに,ドーマーの定理によって,経済成長率が名目利子率を超えることの必要性を説きました.日本経済がローマの定理を満たす経済になるかどうかは民間部門に成長産業を見付け出すことであり,そして,経済成長させることの重要性を示唆しました.
第7回では,租税法律主義を前提として,公平の原則,中立性の原則,簡潔性の原則などの租税の原則や所得・消費・資産を課税ベースにした租税体系について説明し,さらに,第6回と第10回では,企業あるいは経済を成長させる要因としての生産人口,資本ストックさらに技術進歩などの要因とその影響を説明し,アベノミクスの成長政略ではどの産業を成長産業とおさえているかについて検討しました.マクロ経済の経済成長は,所得税・住民税や法人税・事業税などの税収を増加させ,それによって国に財政赤字が縮小し,税収を増加させ財政の健全化に寄与し,財政収支の黒字化をもたらすと考えられます.また,第6回において,成長戦略とは,これまでのターゲッティング・ポリシーではなく,岩盤規制の緩和によって民間活力の支援に徹する政策であることを確認しました.第10回では,「ほっかいどう産業振興ビジョン」や「北海道産業競争力会議」では,(1)食品加工業,(2)観光業,(3)環境・エネルギーを北海道の成長産業に位置付けていることを確認しました.
第8回と第9回では,北海道経済が過去の5%経済(すなわち,名目GDPの北海道のGDPの割合)から4%経済に縮小したこと,特に,北海道は農業分野に強みがあること,食品製品出荷額の付加価値率が低いことを示しました.さらに,第8回では,4月の消費税率の引き上げの影響をディフージョン指標によって検証しました.総じて,その引き上げは,北海道の景気を引き下げたことは確かで,特に,小売業でその影響が顕著でありました.第12回では,北海道農業の特徴として, 地域の多様性や 北海道農業の産出額は1兆円(全国では8兆円),全国の12%で全国一,経営規模では一戸当たり耕地面積は22ha (都道府県の15倍),耕地面積 は115.3haで,北海道の耕地面積の割合は全国の25%,(4) 農業就業者人口は10.7万人で,全国の4.3%, 農業粗利益 2,340万円(全国の5.6倍), 農業所得 581万円(全国の5.5倍), 主業農家 73%(都道府県では21%)(農業所得が主で,年間60日以上従事する65歳未満のものがいる農家)について確認して,北海道の強みである一次生産物の付加価値率を高めるための農業の6次産業化や植物工場の可能性を展開しました.農業の6次産業化とは,農林漁業生産から加工・製造・流通・販売までを一貫して行うことであり,さらに6次産業化とは,農林漁業生産者(生産)と2次(加工・製造)・3次(流通・販売)産業が連携し、新たなビジネスを展開することであります.積として6次産業を理解するのではなく,1次産業+2次産業+3次産業=6次産業であろうと捉えています. 第11回と第13回では,民間企業が海外展開をするときのリスクと,金融機関による海外支援の実態や,輸出入代金の決済方法の実務について説明しました.
第14回では,北海道経済の課題として生産人口と年少人口の減少と社会資本ならびに民間資本の老朽化が出され,「これからの北海道」では,公共投資依存からの脱却,自立経済への移行と,北海道の優位性を活かした北海道経済を築くことの必要性が強調しました.北海道経済の優位性として,? 食関連 ? 観光関連 ? エネルギー関連が挙げられました.そのためには,優位性のある製品の付加価値率を高め,道民所得を引き上げ,北海道民の生活を豊かにする.具体的には,? 食関連 ? 観光関連 ? エネルギー関連の優位性を活かし,北海道経済での産業活動を活発にする.それを実現するのは,将来を担う,若者(学生諸君)です.
本講義の狙いと履修者の到達目標を第1回の講義で示しました.経済学部の教育課程では,「経済学特別講義(A)」は,専門基礎科目群の第II群の科目であります.この位置付けで講義の狙いと履修者の到達目標を定めました.
1.経済学特別講義(A)の講義の狙い
(1)日本の財政(税制)・金融やその課題を知り,日本の金融機関の働きを知り,そして日本経済と北海道経済の繋がりの理解を深め,アベノミクスの経済・社会への波及・影響をおさえる.(2)北海道の現状理解:第1次から第3次産業,さらに第6次化産業,北海道での地域金融,北海道での消費税増加の効果をおさえる.
2.経済学特別講義(A)の到達目標
日本の財政制度や金融制度の実態を知り,財政・金融の実体について深く思索し,消費税率の上昇やアベノミクスなどの金融財政政策の日本経済および北海道経済さらに住民生活への影響を思惟することが到達目標です.具体的には,
(1)日本の財政へ関心と理解の深化,(2)日本の金融機関やシステムの実態を知る,(3)日本の税制度への理解の深化,(4)北海道経済の現状理解の深化,(5)北海道経済と地域金融,(6)北海道経済と産業活動,(7)これからの北海道経済
3.講義の概要:第1回では,本講座の目標と簡単な概要を提示しました.第2回から第7回までは,日本の財政・金融の実態の説明.日本の財政制度や金融制度の実態をしり, 財政・金融についての理解を深化.第8回から第14回では,消費税率の変化やアベノミクス消費税率の変化やアベノミクス( 大胆な金融政策,機動的財政政策,成長戦略政策の3政策)などの財政・金融政策が日本経済や,北海道経済の第1次産業や金融機関に及ぼす影響をマクロ・ミクロの視点から( 計量的に)調べ,さらに北海道民の日々の生活への影響について検証し,深く思惟しました.最終回では講義のまとめをしました.