Menu

経済学科

Department

【経済学科】経済学特別講義A(1月9日:第14回)

2015.01.21

お知らせ
経済学特別講義A(1月9日:第14回)
1月9日(金)の経済学特別講義(A)(3講時(13時10分から14時40分))において,「これからの北海道経済~データで見る北海道経済~」というタイトルで 飯田 治氏がゲストスピーカとして講義をされました.
 
道銀地域総合研究所の機構とその事業内容と自身の自己紹介を簡単にされた後に,講義内容に進まれました.第6回の「アベノミクスと北海道経済」(板谷 淳一様,北海道大学公共政策大学院教授),第8回の「北海道経済の現状と展望~消費税率引き上げ後の道内経済の動向~」(斉藤 正広様,二十一世紀総合研究所調査部部長),第9回の「北海道の経済情勢等」(多田 誠一様,財務省北海道財務局総務部長),ならびに第12回の「北海道農業を経済から見る」(佐藤泰一様,北海道銀行営業推進部 アグリビジネス推進室室長)の講義の内容と重なる部分をも斟酌され,講義を展開されました.講義では30枚程のパネルを使い,北海道銀行発行の『調査ニュース』や『2015年度北海道経済の展望』,総務省,財務省,経済産業省,農林水産省,国土交通省,内閣府のデータを資料として用いて展開されました.
 
講義は,最初に,1980年から2010年までの北海道経済事情を回顧され,引き続き,北海道経済の現状ならびに北海道経済の課題について説明され,最後に,本講義のテーマになっているこれからの北海道について展開されました.北海道経済の主要指標に基づいて,北海道の比較優位性の存在する「食関連」,「観光」,「エネルギー」を活かした地域経済の構築の必要性を強調されました.その概要は,以下の(1)から(3)です:
 
経済学特別講義A(1月9日:第14回)
1.北海道経済の特徴:1980年から2010年までの回顧
1.1
(1) 北海道の人口は全国と同様に減少しています,また,北海道の人口の全国シェアも趨勢的に減少しています:1980年には4.8%,2010年には4.3%へとなっています.
(2) 「道民経済計算」(平成23年度版)などによって,名目道内総生産のGDPに占める比率(シェア)も1980年の4.3%から2010年の3.8%へと減少していることを示されました.2002年以降では,名目道内総生産も,同時に,減少し,およそ20兆円からおよそ18兆円に減少しています.これらの減少の要因として,公共事業の削減ならびに人口減少に伴う新設住宅建設着工の減少などを挙げられました.

1.2 製造品出荷額はバブル崩壊後も大きな変動も無く,全国シェアは2%ほどでありますが,農業産出額は1兆円程であり,この産出額の全国シェアでは12%を占め,趨勢的に上昇しています.この農業部門が北海道の強みであります,と強調されました.
経済学特別講義A(1月9日:第14回)
2.北海道経済の現状:2001から2011年度
2.1道内総生産
 名目道内総生産は趨勢的に低下し,日本の名目GDPに占めるその割合が4%以下で推移していることを示され,さらに,実質道内産総生産では,2001年度を100とすると,デフレ経済にも関わらず,100以下になっており,2011年度には97.3であります.全国の実質GDPは上昇していますが,北海道の実質の総生産は名目と同時に趨勢的に低下していることを示されました.
 
2.2北海道経済の特徴
(1) 公共投資への高い依存度
 北海道の公共投資への依存は7%(道内総生産占める公共投資の割合)程であり,2001年度以降,公共投資額が大きく減少し,これが道内総生産の縮小の大きな要因になっている,と見解を述べられました.
 
(2) 経済活動別(産業別)の道内総生産の構成比
 北海道の第1次産業と政府サービスの構成比が高く,第2次産業の構成比が低い.北海道の第1次産業の特化係数は3以上,政府サービスの特化係数は1.5ほどであるが,製造業の特化係数は0.5程である.ここでの特化係数は,北海道の各産業の構成比を全国の産業構成比で割った値であります.一般的に,この値が1より大きければ,その産業で北海道に比較優位があることを示唆しています.
 
(3) 人口動態:生産年齢人口
 北海道の総人口は,1997年以降減少し,2014年には550万人以下(2013年の人口は543.1万人)で推移している.15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口は増加し,15歳以上65歳未満の人口年齢構成は減少している.この生産年齢人口は,国のあるいは地域の潜在的経済成長(率)を規定する要因の一つであります.
 
(4) 移輸出と移輸入の差として示される域際収支
 「道民経済計算」によって,北海道の移輸出と移輸入の推移を示され,北海道は趨勢的に移輸入超過になっていることを示されました.およそ1.5兆円から2兆円の移輸入超過になっています.この大きな要因は,第2次産業(特に製造業)の構成比の低さにあると述べられました.
 北海道の輸出依存度も低く,全国平均では15%でありますが,北海道では2%(道内総生産に占める割合)程であります.
 
2.3 足元(2013年度から2014年度)の北海道経済の景気動向:主要経済指標の動向
(1) 個人消費
 大型百貨店販売額(全店),大型スーパー販売額(全店),ならびにコンビニエンスストアー販売額(全店)の月次データから,4月の消費税率引き上げの駆け込み需要による影響は見られるが,個人消費は緩やかに回復しています.また,乗用車新車販売額は,前年比では,減少傾向にあります,と説明されました.
 
(2) 住宅・公共投資
 消費税税率引き上げの駆け込み需要の影響で新設住宅の着工数が減少傾向にあり,また,公共投資の請負金額も,この7月以降では前年比で減少傾向にあります,と説明されました.
 
(3) 設備投資
 日本銀行の「企業短期経済観測調査(短観)」や北海道財務局の「法人企業景気予測調査」などによって,幅広い業種で設備投資意欲が高まってきていることことを示唆されました.特に,エネルギー発電設備や,医療や福祉などの非製造業での設備投資の増加について言及されました.
 
(4) 観光
 観光入込客の推移を示され,高水準になっている.台湾や中国や韓国などのアジアからの観光客が多いことを示された.
 
(5) 企業の景況感
 日本銀行の「企業短期経済観測調査(短観)」によって,消費税率引き上げ後の景気動向を説明され,この10-12月期の業況判断(DI)では,全産業で景況判断では「0(ゼロ)」になり,前回の9月の調査より,5ポイント低下している.2013年3月以来の低水準となり,慎重な見方が多くなっている,と説明されました.
 
(6) 2015年度北海道経済の見通し(2014年12月4日発表)
 北海道産業局,総務省の資料に基づき,道銀地域総合研究所が作成された主要経済指標によって,次のように,北海道銀行の予測を示されました:「公共投資の減少基調は継続するものの,雇用改善と所得情勢の持ち直しなどによって個人消費は増加に転じるであろう.また,国内外の需要が復調し,北海道の移輸出も増加に転じ,北海道の総生産もプライスの成長に転じるであろう.2015年度の道内実質経済成長率を0.7%」,と予測されていることを示されました.
 
2.4 北海道経済の課題
(1) 人口減少
 年少人口と生産年齢人口が減少し,経済の潜在的経済成長を引き下げることを説明され,さらに,若年女性人口(20-39歳)が2040年には現在の5割までに減少し,かつ,人口1万人に満たない市区町村の消滅可能性について述べられました.
 
(2) 社会ストックならび民間資本ストックの老朽化
 社会資本ストックとしての橋梁,河川管理施設,港湾岸壁などの6割近くが2032年までに建設後50年を経過し,その更新が必要になるが,財政難の政府部門には維持補修費用を賄うことのの困難が伴い,国の強靱化対策について再検討する必要になり,また,民間(製造業/非製造業)の資本ストックも高齢化しているため,更新する必要になる,と示されました.
経済学特別講義A(1月9日:第14回)
3.これからの北海道経済
3.1 北海道の優位性
(1) 食関連
 広大な土地を利用して低い生産費での生産が可能であります.
 
(2) 観光関連
 湖沼・河川・火山・温泉などの変化に富む自然・地域の存在し,農業や漁業が盛んな地域性を活かした食品と料理が存在し,体験型観光を楽しめる. 
 
(3) エネルギー関連
 太陽光発電設備の出力と認定件数が日本一で,風力発電設備の設置の基数が日本一であり,バイオマス発電向けの燃料確保が比較的容易です.
 
(4) その他:バックアップ拠点構想
 
3.2 この優位性を活かした地域経済水準の引き上げ
(1) 食関連では,行政などからの補助金なしで経営して入る富良野オムカレーによる地域活動の事例を説明されました.この経済効果が10.2億円,宣伝効果が5.8億円になっていることを力説されました.
 
(2) 観光関連では,札幌冬季オリンピック・パラリンピック競技大会開催の経済効果:生産効果と雇用者所得効果について言及されました.
 
(3) エネルギー関連では,エネルギーの地産地消によって域際収支の改善になる.この活動として,下川町や鹿追町のバイオマス発電施設やバイオマスガス,また,稚内市の太陽光,寿都町の風力等の事例を説明された.
 
 
 
最後に,本講義のまとめをされました.道内経済の域内総生産で示される経済規模は趨勢的に縮小し,公共投資への依存後が高いこと,公共投資から脱却し,自立型の経済に移行するには,需要のある製品の付加価値率を高めることが必要になります.また,北海道の経済活動別の総生産から判断するに,「食関連」「観光」「エネルギー」に比較優位性があります.この優位性のある産業を活用した地域経済の構築については,将来を背負われる学生諸君にかかっております,と結ばれました.
 
講師をお引き受けして頂きました飯田 治様には深く感謝致します.
 
経済学部 久保田 義弘
  • 発行日: 2015.01.21