経済学科

【経済学科】経済学特別講義A(11月28日:第10回)

2014.12.14

お知らせ
経済学特別講義A(11月28日:第10回)
11月28日(金)の経済学特別講義(A)(3講時(13時10分から14時40分))において,北洋銀行 地域産業支援部の坂口 収氏がゲストスピーカとして講義をされました.
 
講義題目は,「成長産業と地域金融」でありました.本講義の前半においては,成長とは何かあるいは成長産業とはどのような産業かという問いに対する回答を探りつつ展開され,その後半では,地域金融あるいは地域金融機関はその成長産業を育てることができるのであろうかという問いに対する回答を巡って展開されました.その展開では,20枚ほどの報告スライドに基づき,成長産業あるいは地域金融について,北海道の成長産業あるいは成長企業について,聴講者との共感を大切にしながら,分かりやすく解説し,かつ,説得的な語らいで講義を進められました.次の(1)から(4)に要約される内容で講義を展開されました:
経済学特別講義A(11月28日:第10回)
(1)成長産業については,成長産業は時間と伴に変遷すること,産業革命以降の成長産業を例に取られ説明されました.
(2)成長とは何に基づき測られるのであろうかについては,人口あるいは貿易などのよって成長が測られることを示され,さらに何故成長する必要があるのであろうか,成長によって誰(どの層)が成長の恩恵に浴しているのであろうかについては,アメリカの富裕層1%への所得分配シェア−が増加していることを説明されました.
経済学特別講義A(11月28日:第10回)
(3)産業の成長と企業の成長とは異なることが説明されました.企業の成長は,産業の成長に如何に関連しているのかについて,ハーバード大学のマイケル・ポーターの『競争の戦略』の競争の優位性についての論点を引用しながら,その問いについての思索を展開されました.企業が成長するためには,企業の保有資源の優位性が必要になることを説明され,実際に,成長を遂げている企業の例としてセブンイレブンを取りあげ説明されました.セブンイレブンは,1974年の東京都江東区豊洲店が一号店でありましたが,現在では,日本国内では1万7千店舗ほどあり,海外店を含めると5万4千店舗を超えています.1店舗あたり年間2億2千万円の売上げ,1?あたりの売上げが220万円に達しています.取扱商品は,雑誌や食料品や雑貨などのみならず,コピー・サービスやデジカメのプリント・サービスやチケット販売,その上,セブン銀行やクロネコ輸送サービスの仲介を取り込み,最近では,ネットショッピングへ展開しています.セブンイレブンのビジネスモデルは,一つの店舗が,「地域商店」を取り込み,「地域金融機関」をも取り込んだ「総合店舗」として発展を目指すものです.
経済学特別講義A(11月28日:第10回)
 (4)地域金融は,その成長産業を育てることができるのであろうかという問いについて説明されました.金融機関としての銀行の機能(決済,資産運用,資金の貸付)を簡潔に説明され,成長に金融あるいは金融機関がどのような役割を果たしうるかについて簡潔に説明され,金融機関としての銀行には,貸出に当たっては企業情報を必要であります.しかし,新規成長産業分野の企業の悲運は,これまで世間には存在しない新たな分野であればあるほど,その企業に関する情報は不足し,金融機関としては情報収集や貸し出し審査などの監視費用や取引費用が増大することです.その様な成長分野の企業には,貸出金利を引き上げ,融資する一方で,銀行は,その様な企業に担保融資,あるいは,信用保証融資を行い,できる限りの融資体制で成長企業,あるいは,成長産業を支援しています.
企業の資金調達の方法が多様化してきていることを説明され,短期資金や長期資金の銀行からの借入だけではなく,株式市場での調達のみならず,投資ファンドやクラウドファンドなどの直接金融,さらには,金融リースによる機械や設備の設置が行われていますと説明されました.地域金融機関の地域の成長産業との関わりについては,政府系金融機関(日本政策投資銀行など)とも連携を取りながら,地域金融機関による成長産業への融資として,地域密着型金融(「リレーションバンキング」)が行われ,企業と金融機関の長期的な取引関係を保ちながら,金融機関は,地域の中小零細企業の経営状態を把握し,借り手の信用情報に基づき,金融仲介機能を果たしていると説明されました.
経済学特別講義A(11月28日:第10回)
質疑応答では,成長と環境保全の両立はあり得るのでしょうかという質問に対して,環境保全と地域社会の安全と地域産業の成長の両立を可能にすることが大切であり,成長の速度を急激にしない事が肝心ですと返答されました.また,農業は,地産地消産業とし,成長産業にする必要はないのではないでしょうかという問いに対して,もしTPPによって稲作が停止したならば,日本に穀物が来なくなるかもしれません,さらに,世界の人口が増加していますので,日本は穀物を輸入できなくなるかも知れませんと返答されました.この農業の問題につきましては,本講義の第12回「北海道農業を経済から見る」でより深くその内容について検討して頂きたいと述べられました.また,地震や風水害や火山災害による国の破壊に対する危機管理の方が優先させるべきではないでしょうかという質問に対し,その自然災害リスクは,リーマンショックなどの経済リスクと同じように考え,対処することが必要ですと返答されました.
最後に,北洋銀行の経営理念やその簡単な沿革や店舗数・行員数や資金量・貸出金についての資料を提示され,北洋銀行が地域の中小企業への支援,成長産業への支援の実態の一端について簡潔に説明されました.
 
学生に知識として記憶するのではなく,適切な問いを発し,それに自分なりの回答を与えることの重要性を強調され,講義を終えられました.講師をお引き受けして頂きました北洋銀行 地域産業支援部の坂口 収様には深く感謝致します.
 
経済学部 久保田 義弘
  • 発行日: 2014.12.14