心の手帳 36号(2011年10月)

秋の景色

タイトル画像
  朝夕が冷え、木々の紅葉が鮮やかになってきている今日この頃、これから雪が舞う季節が到来しそうです。  皆様いかがお過ごしでしょうか?
 寒くなると、空気が澄んで綺麗な空を見ることができますね。この間も大学から帰る途中に綺麗な満月を、別な日には、雨があがった後に虹を見ることができました。  毎日の生活が忙しい中で、ちょっとだけ幸せな気分になりました。

 たまには、時間をつくって空や周りの景色を眺めるのもいいのではないでしょうか。

老境のコンタ君

葛西 俊治 〔心理臨床センター研究員・臨床心理学科教員〕
やわらかい茶色の毛並みのポメラニアン。12年前は可愛くて元気な子犬でしたが、さすがに今は老境。何となくヨタヨタと歩いてはふいに立ち止まります。  すでにお爺さんですが、からだが小さいのでまだまだ可愛らしい。散歩していると子どもたちが「触っていい?」と尋ねます。「あっ、柔らかい!」「あったかい!」とはしゃいでくれます
 老境のコンタ君はきっと面倒くさいはずですが、飼い主の私は心の中で「愛玩動物としての使命であるぞ」と念じます。

 角の家のおばあさんが亡くなって、一緒に住んでいた孫娘さんは結婚。斜め後ろの家の男の子、小中学生の頃は私の家の小さな庭にサッカーボールを蹴り込んで、チューリップをなぎ倒したりもしましたが、今は就職浪人。隣の夫婦は二人とも定年となり、宗教活動をしている反対隣の夫婦も穏やかになり、旦那さんは車の中でタバコを吸っています。地域全体が老境に入っているのかぁと、老人元年の私はようやく気がつきます。
コンタ
 『老境のターザン』という小品では、「アアッアー」「ドサッ」「あ、ターザン、また落ちた」とチンパンジーがつぶやきます。初めて読んだ頃は「あぁ、そうか。ターザンも落ちるのか」とただ驚いたのですが、今は愛と優しさと慈しみの心に満ちた私です。  歳月を経て、それなりに人は変わるものだなぁと嘆息します。

 それはそうと、今日は2講目があるし、それから心理学実験の準備、そのあとに会議…の前に分析法の原稿をもう一度確認して。いや、その前に今日は安いからガソリンを入れて、それから高速道路で向かえば大丈夫のはず…。

 そうした忙しさにまぎれつつふと気づくと前期高齢者? 次の世代や若い人達に伝えたいことがた草なるような気がしながら焦燥感に追われつつ、高速インターチェンジに入り一気に加速する。丸一日、仕事にがんばって、夜は横倒しで眠っているコンタ君の毛並みにふれながら、私も静かに老境へと向かう。
コンタ

実習生(大学院生)のつぶやき

 秋と言えば「芸術の秋」。中でも私にとっては、「映画の秋」です。大学時代から映画が大好きになり、今では一番の趣味になりました。小説も読みますが、映画は私にとって、異世界を体験させてくれたり、人生について考えさせられたり、あるいは主人公が目標の人物になったり…など、たくさんの刺激を与えてくれます。

  私は週に一度は映画館に足を運びます。自宅のテレビで見るよりも映画館で見るほうが好きです。最近はほぼ全ての映画がレンタルできるようになり、家庭で気軽に映画が楽しめるようになりました。とても素晴らしいことだと思いますが、映画館で映画を見る楽しみがこれからの若い世代にはなかなか伝わらないのではないか…と私は少し心配しています。

  みなさんは感じたことがあるでしょうか。面白い映画を見た後の「あぁ楽しかったな」という感覚。そして映画館で映画を観た後に周りを見渡すと、周りの人も同じような反応をしているということがあります。また、言葉には出さなくても、良い映画の上映後には、管内があたたかい雰囲気で包まれていることでしょう。

友達や家族と行くと、言葉で感想を言い合える、一人で行っても周りのお客さんの様子や管内の雰囲気から、映画の感想を言語ではない部分で共有できる…そんな気がしてならないのです。みなさんは最近映画館で映画を観ましたか? 芸術の秋に映画館に足を運ぶのもよいかもしれません。
(M.K.)