心の手帳 39号(2012年10月)

小さな秋

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 短かったつかの間の夏も過ぎ、すっかり秋の景色になりましたね。空気が澄み、空も高く感じられます。木々も色づき始め、いつも通る道も以前とは違う表情を見せてくれているようです。日ごとに感じるわけではないけれど、毎日少しずつ少しずつ、季節は移り変わっているのですね。ほんの少しの違いは見えづらくても、その一つひとつが積み重なって、大きな変化となるのでしょう。これからだんだんと涼しさが増して、外を歩くには寒いくらいになってきます。熱めのコーヒーでほっと一息ついたり、あったかな毛布にくるまって読書をしたり、寒さが厳しい季節だからこそ、ちょっとしたぬくもりを探して、ゆっくりとした時間を楽しめたらな、と思います。

コミュニケーションについて

佐野 友泰〔心理臨床センター研究員・臨床心理学科教員(臨床心理士)〕
 先日、とある調査で、単身熱帯圏の東南アジアに行く機会がありました。私は、ほぼ海外に出たことがなく、英語もあまり得意ではありません。家族や周囲の皆さんに心配されながらの出張でした。現地では基本ひとり行動で、調査の際に日本語が堪能な人と数時間あっただけで、あとは全てその国の言葉と、拙い英語のみのやりとりでした。

 ところが、ひとりでレストランで食事をするときも、買物をするときも、ほぼ困ることはなかったのです。私は少々の英語と身振り手振りで意思を伝えようとし、現地の方は「かわいそうなスーツを着た汗だくの日本人が何かを伝えようとしている」と一生懸命耳を傾けてくれ、メモ用紙とペンを持ってきて、「これに書け」と渡してくれた人もいました。

 一番困ったことといえば、私はジッポーライタを使っているのですが、ジッポーオイルが切れて使えなくなってしまいました。現地のコンビニではジッポーオイルはなかったので、露天のジッポーを扱っている店で、「このジッポーにオイルを入れて欲しい。純正品を入れて欲しい」と頼んだときでした。10分ほどやりとりの後、私やようやく望みの物を手に入れたのです。

 ここで私は、コミュニケーションとは、発し手が「伝えたい」という意思を持ち、受け手が「聞こう」という意思を見せてくれれば、言葉が通じなくても何とかなるものだということに気づきました。

 私も含めて、私たちは社会の中で他者とコミュニケーションが上手くとれず、悩むことも多いのではないでしょうか。相手がコミュニケーションを拒絶している場合は別ですが、そうではない場合、こちらが伝えたいという熱意があれば、時間はかかるかもしれないですが、コミュニケーションは成立していくものだと思います。

 私たちはコミュニケーションが上手く取れない相手とは、面倒くさくなってこちらから避けてしまったりもします。しかし、コミュニケーションは伝えたいという思いと諦めない気持ちが大切なのだと私は再認識しました。

 今手元にあるジッポーライターを見ながら、ライターにより気づかされたコミュニケーションのコツもあるものだと感じています。

実習生(大学院生)のつぶやき

 自動販売機に「あったか~い」のコーナーが増え始めた今日この頃、秋を感じることが多くなってきましたね。みなさんにとって、秋と言えば何を連想するでしょうか。私はもちろん、「スポーツの秋」です!

 私は、体を動かすことが大好きで、今もバレーボールを楽しんでいます。バレーボールを始めた当初、試合ではいつも応援席…。応援が楽しいはずもなく、「どうせ出れないし…」と、だんだん練習へ足を運ばなくなりました。バレーボールを初めて1年半が過ぎた頃、顧問の先生が「おい、セッターをやってみないか。」と私に声をかけてくれました。私は今でも、どうしてあの時私をセッターに抜擢したのかよく分かりません。しかし、その日から私は水を得た魚のように、一生懸命練習に励み、高校最後の試合の最後の一点を入れられた瞬間を今でも覚えています。

 バレーボールの基本ルールは、コート内の6人で3回までに相手コートへボールを返すというスポーツです。この6人でプレーするというのがバレーの醍醐味なんです!今のサーブポールは私が取るべきだったのか、それとも後衛に任せても良かったのか、サーブが打たれた後一瞬で判断しなければなりません。そのためには、日々の練習の中で技術の向上はもちろん、6人のコミュニケーションが試されるわけです。一人ひとりのプレーがいくら上手くても、コミュニケーションがとれいないチームは試合で負けてしまいます。他にも、6人の中で調子が悪いプレーヤーがいると、周りがフォローに入り、なんとかチームの雰囲気を盛り上げます。このコミュニケーションが大事というのがチームスポーツの面白いところですね。

 つい先日も大会へ出たのですが、あのコート内へ足を一歩入れた時の緊張感がたまりません。応援のときに見ていた風景とはまるで違っています。ネット越しに見える相手の目や、後衛から聞こえてくる「行け!」という声、味方までもが騙されるセッターのトス。そしてポールがなかなか落ちずにラリーが続いている時のハラハラドキドキしたあの感じ!いや~やめられないですね。
(N.H.)
 
挿絵