心の手帳 47号(2015年6月)

ふと思い出すこと

タイトル画像
 北海道の肌寒い春が過ぎ、いつの間にか木々の緑が深みを増し、陽射しが明るくなる季節になりました。吹いてくる風もだんだん柔らかくなり、沈む夕日も空に綺麗に映っています。
 気持ちいい日が増えてから、何度か遠出することがあり、行きも帰りもバスに揺られて、窓に流れる風景を眺めていることがありました。 もう何度も見ている景色だけど、ふと、いつか遊んだ日のことを思い出したり、汗をかきながら一生懸命走った部活のことを思い出したり、なにもかも上手くいかないような気分になった日のことを思い出したり…いつも同じ風景でも、その日のその前を通る自分によって、思い出すことはいろいろです。 そんな風に、ふと思い出すものこそ大事な思い出だったりするんですよね。
 ふと外をみて、たまに思い出に浸りながら、暖かくなっていく日を過ごしていきたいです。

慣れ

山本 彩〔心理臨床センター研究員・臨床心理学科教員(臨床心理士)〕
 平成27年4月から本学に着任いたしました山本彩と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今私が感じていることを思うままに書かせていただきたく思います。
 私はこれまで精神科医療分野、教育分野、福祉分野などで働いてきました。入ってみなければわからないもので、精神科医療には精神科医療の文化や常識が、教育には教育の文化や常識が、福祉には福祉の文化や常識がありました。最近では、少しですが、労働分野、司法分野で働くこともあり、やはり同じように文化や常識の差異を感じました。
 それぞれ飛び込んですぐには、これまで私の中にあった文化や常識との差異に驚き、戸惑い、差異に慣れるよう自分に言い聞かせます。が、きっと誰にも気づかれぬまま、1~2ヵ月もすれば、差異を特段感じなくなり、差異は自分の中に取り込まれていきます。 思い起こせば学生時代、インドやネパールなどを旅行していたときも同じプロセスを経ていました。

 しかし今、そのパターンが、崩れています。大学教員になって、はたして自分が差異に驚いたのか、戸惑ったのか、少しなれたのか、自分に全く実感がありません。なぜだろうと思い返したとき、思い当たることが一つあります。それは本学の先生も学生さんも、事務の方々も、たいへん親切なので、一日に2~3回は、色々な方が「慣れましたか?」と私に聞いて下さるのです。  回答の仕方はその時その時でまちまちですが、今回は、人知れずそっと驚き、人知れずそっと取り入れていくことなく、その瞬間の思いを表出しています。そしてそれを受け止めていただいています。
 この新しいパターンが今後どんな影響を及ぼしてくれるのか、楽しみでもあります。

実習生(大学院生)のつぶやき

挿絵
 大通り公園にはライラックの花が咲き誇り、道行くい人を楽しませているように感じられます。 ふと足元を見ると、道端にも可愛らしい花が健気に咲いているのを見つけることが出来、お散歩にはよい季節ですね。 暑さが日ごとに増してまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。時間が過ぎるのは早いもので、2015年もあっという間に半分が過ぎました。 自分の中で節目を迎えるたびに思い出す言葉があります。

 「生きるというのは人に何かをもらうこと
  生きていくというのはそれをかえしていくこと」

 今まで沢山のあたたかいものを貰ってきた私です。少しずつでも、誰かにそっとお返しできるように、あたたかさを忘れずに日々過ごしていきたいものですね。
(A.F.)
 
 
イラスト:ふわふわ。り