心の手帳 54号(2017年10月)

新年

タイトル画像
 一暑い暑いと過ごしていた夏も過ぎ、気がつけば山の樹木がポツポツとオレンジや黄色味を帯び美しく彩られています。ついこのあいだ桜をみたばかりという感覚がありますが、早いものでもう紅葉の時期かと驚き、日々の生活に追われていることに気がつきました。
みなさんは、本学院の近郊にも数多くの紅葉スポットがあることをご存知でしょうか。野幌森林公園は知っている方も多いと思いますが、大麻西公園や大麻東公園も木々の葉が色とりどりに染まり、見応えがあります。毎日忙しく過ごしていると、景色を眺めるような心の余裕を忘れがちになります。たまには自然の中でゆっくりと深呼吸して大地のエネルギーを身体に蓄えれば、気持ちもリフレッシュできるのではないでしょうか。自分にもそう言い聞かせ、大地と戯れる時間をとりたいと思います。

お月見の日の出来事

手代木 理子(心理臨床センター研究員・本学教授)
私は今まで中秋の名月=(イコール)満月と思っていましたが、中秋と満月の日は必ずしも一致するとは限らないそうですね。ちなみに今年の中秋は10月4日で満月はその2日後の6日だそうです。
 
 昨年の中秋の夜の出来事だったと思います。
 自宅への帰り道、私の後ろから、お母さんが小さな男の子を後ろに乗せて、自転車をこいでおられました。私を追い越して、角を曲がり、私も同じ方向に向かいました。道はなだらかな上り坂でした。突然、その男の子が、興奮ぎみに叫びました。「おかあさん、見て!すごいよ!すごーい!すごい!」その声に、私もふと顔を上げると、まあるく、きれいなお月様が前方の空に見えたのです。それは、少し青みを帯び、神秘的というか見事なお月さまでした。私も、心の中で「すごーい!」と叫んでいました。しかし、… … …、お母さんは家路を急いでいらしたのでしょう。しかも、上り坂。下を向いて必死に自転車をこぎ続けておられました。男の子もまだお話が上手ではないようで「すごい!ねえ、見て!」としか言えず、そのうちに自転車はまた角を曲がって、お月さまは見えなくなってしまいました。
 
 自転車に揺られながら、ゆったりとお月さまをみて感動している男の子と、下を向いて必死に自転車をこいでいるお母さんとの落差がなんとも微笑ましく、私はお二人の後姿を追いながら、くすっと笑ってしまいました。そして心の中で「お母さん、今日も一日お疲れさま。坊や、お月さまのこと、教えてくれてありがとう!」と声を掛けました。

 今年の中秋の夜はどんなお月さまが見られるでしょうか。うさぎの置物と、ススキと、お団子を飾って楽しみたいと思います。

実習生(大学院生)のつぶやき

挿絵
北海道の短い夏が過ぎ、あっという間の秋。今年は暑い日が例年より少なく、新幹線のようにびゅーんと夏が通り過ぎていったような感覚です。ところで、皆さんは秋をどんな所で感じていますか?赤く染まった葉でしょうか?それとも空を飛び回るトンボでしょうか?人によって様々な場面で秋を感じていると思います。

 私は学校に向かう途中、道に栗がいくつも転がっているのを見つけました。たまたま下を向いて歩いていたから気が付いたのです。見上げると、大きな栗の木。いくつか栗をひろって、小さな秋を楽しみました。上を向いて歩くのもいいけれど、たまには下を向いて歩くのもいいなぁ。いつもと視点を変えてみると、何か新しい発見や出会いがあるかもしれませんね。
(H.A)
 
 
 
イラスト:ふわふわ。り